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SMBCの「法人営業を変革するデジタルマーケティング」とは?—新たな営業体制で企業の課題を解決

企業のデジタル化が加速する中、SMBCは法人向け営業のあり方を変革し、デジタルマーケティングを活用した新たなアプローチを展開しています。従来の対面営業に加え、デジタルマーケティングを活用した新たな営業体制の構築に取り組むSMBCグループで中核を担うのが、法人デジタル企画室です。

今回は、当室の役割や取り組み、課題、そして今後の展望について、法人デジタル企画室 室長の船山 明信氏、室長代理の安藤 里奈氏、そしてキャリア採用でSMBCに参画した室長代理の森本 祐吏氏に伺いました。

法人向けデジタルマーケティングへの挑戦

法人デジタル企画室はどのようなミッションを持っているのでしょうか?

船山法人のお客さまとの共創ビジネスの企画や、法人向けデジタルサービスの企画・開発を目的として前身の法人デジタルソリューション部が2020年に設立され、組織変更により、2025年の4月に法人デジタル企画室となりました。ここ1~2年は、銀行の強みである対面営業にデジタルの力を加えた新たな営業体制の構築に力を入れています。

また、新たなチャレンジを積極的に推進する環境を整えており、若手社員や女性社員の割合も高いことが特徴です。デジタルマーケティングや新規事業開発に関心のある方を中心にキャリア採用も進めております。

株式会社三井住友銀行 ホールセール統括部 法人デジタル企画室 室長
船山 明信氏

「お客さまの課題解決」を支えるデジタル施策

現在、最も注力している取り組みについて教えてください。

船山法人のお客さまが必要とする情報を、適切なタイミングでお届けすることを重視しています。自社オウンドメディア「Business Navi」や、会員制メディア「SMBC Global Information」、さらにはウェビナー、メール、架電など、多様なチャネルを駆使し、お客さまにとって価値のある情報提供を行っています。

法人向けのデジタルマーケティングといえば、新規顧客獲得を目的とするケースが多いですが、私たちは既存のお客さまの課題解決に重点を置いています。SMBCならではの独自のマーケティング形態を確立し、お客さまのビジネス成長に貢献したいと考えています。

具体的にどのような施策を展開しているのでしょうか?

森本私はオウンドメディア「Business Navi」の運用や管理を担当しているのですが、お客さまの課題ごとにコンテンツをカテゴライズし、最新の法規制や市場トレンドをふまえて、タイムリーに情報を届けられるよう改善を重ねています。

Business Naviなどのオウンドメディアでは、どのようなコンテンツが特に好評ですか?

森本脱炭素」「脱炭素経営」というキーワードは非常に注目されています。CO2排出量の開示については取引先から要請されることもあり、多くの企業にとって無視できない問題です。また、「人的資本経営」も関心度の高いキーワードですね。2023年3月期から、上場企業は有価証券報告書での人的資本の情報開示が義務化されました。今後は上場企業以外にも対象が広がる可能性があるため、先を見越してのニーズが発生していると思われます。

安藤週2~3本のペースで、営業担当が名刺交換をしたお客さまに向けて、お役立ち情報やセミナー案内をメール配信するような形で運営を行なっています。森本からもあったように、扱うテーマは「脱炭素経営」「人的資本経営」「電子帳簿保存法対応」「2025年の崖問題」など、企業の関心が高いものを厳選して配信しています。

最適な情報を、適切なタイミングで、ストレスなく届ける

デジタルマーケティングを活用することで、お客さまにどのような影響があると考えていますか?

船山お客さまにとって最適な情報を適切なタイミングで届けることで、お客さまのスムーズな意思決定を支援できていると感じます。

森本お客さまが求める情報を迅速かつ適切なチャネルで届けることが重要です。一方的な情報発信ではなく、お客さまがSMBCの情報をストレスなく受け取れる仕組みを構築していきたいと考えています。

一方で、取り組みを進める中では、どのような課題を感じていますか?

安藤お客さま一人ひとりに本当に役立つ情報を届けることが最大の課題です。日々多くの情報が飛び交う中、開封されないメールは簡単に埋もれてしまいます。そのため、コンテンツの価値向上だけでなく、船山が指摘した「最適な情報を適切なタイミングで届ける仕組みづくり」に力を入れています。

昨今ではビッグデータやAIの活用が話題となっていますが、今後はデジタルマーケティングをどのように進化させていく予定ですか?

安藤当行に蓄積している法人のお客さまに関する情報やデータを活用し、オンライン・オフラインの両面を連携させることで、お客さまの興味・関心にあったお役立ち情報をよりタイムリーにお届けしていきます。また、法人情報、金融・非金融のSMBCグループのソリューション情報、各業界でのトレンド・規制等の情報など、膨大なデータから必要な情報を取捨選択・分析を行うにはAIの活用は必須だと考えています。

写真左:株式会社三井住友銀行 ホールセール統括部 法人デジタル企画室 安藤 里奈氏
写真右:株式会社三井住友銀行 ホールセール統括部 法人デジタル企画室 森本 祐吏氏

デジタルマーケティングを起点として営業変革へ

デジタルマーケティングの活用により、営業プロセスはどのように変化しましたか?

安藤資料請求やセミナー参加者など、デジタルマーケティングで獲得したお客さま情報に対し、インサイドセールスを通じてアプローチを実施しています。検討度合いの高いお客さま、資料や架電をきっかけに課題が顕在化したお客さまと会話することができ、営業担当との面談につなぐことができました。タイミングを逃すことなくアプローチを実施できているため、本業の預金・送金やグループ会社のソリューションの成約も出始めています。このように、デジタルマーケティングを起点として営業プロセスが効率化されていくような事例が今後も増えていくと考えています。

お客さまや銀行内の反応はいかがですか?

安藤想像以上に好意的な反応をもらっています。配信開始当初は「頻度が多いと配信停止が増えるのでは?」と懸念する声もありましたが、実際には「資料がわかりやすい」「相談のきっかけになった」との声が届き、手ごたえを感じています。

キャリア採用の視点から見るSMBCとは

森本さんはキャリア採用でSMBCに参画されましたが、SMBCの強みはどこにあると感じますか?

森本デジタルマーケティングの取り組みはまだ始まったばかりですが、B2Bマーケティングの推進スピードは他行よりも早いと感じています。また、銀行の常識にとらわれず、新しいチャレンジを推奨する文化がある点も大きな強みです。

今後はSMBCグループ全体のマーケティング機能を横断的に強化し、労働力不足の課題解決にも貢献できるのではないかと考えています。

「SMBCのデジタルマーケティング」という観点ではいかがでしょうか?

森本一般的な法人向けデジタルマーケティングでは新規顧客の獲得がメインとなりますが、私たちのデジタルマーケティングは既にお取引いただいている法人のお客さまに対して、情報提供を通じてお客さまの困りごとを解決するサポートをさせていただいています。SMBCではお客さま専任の担当者がいるため、お客さまからの信頼をベースとした「顔が見えるデジタルマーケティング」であることが強みではないでしょうか。

デジタルマーケティングを推進するにあたり、どのような人材が求められていますか?

船山前提として、Web広告やメールマーケティング、オウンドメディア、インサイドセールスなど、マーケティングやナーチャリングに関する基本的な知識・考え方は必須です。加えて、SMBCにおける法人のお客さま、SMBCのソリューション、営業担当者の考え方なども総合的に勘案し、どのようにSMBC流の法人デジタルマーケティングを実施していくべきか、カスタマイズして案件企画・推進できる力が必要だと考えています。正解は1つではなく、PDCAサイクルをまわしながらブラッシュアップすることが重要ですね。

デジタルを活用した営業支援で新たな価値提供を

最後に、今後の展望について教えてください。

船山お客さまが商品を導入する際、Webサイトやウェビナーなどで情報収集するのが当たり前の時代になりました。我々もデジタルを活用した営業スタイルへと変革し、お客さまのニーズに寄り添う存在であり続けたいと考えています。

また、変化の激しい時代において、常に価値を提供し続けられる組織を目指し、銀行の営業スタイルを常に進化させ続ける支援をしていきます。お客さまに信頼され、営業担当や商品開発部門からも頼られる存在を目指し、今後も挑戦を続けていきます。

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デジタル技術の進化により、お客さまにとっての情報収集や意思決定のプロセスがさらにスムーズになり、より良いサービス体験につながることが期待されます。SMBCはこれからも、お客さまのニーズに応じた最適な情報提供を目指し、デジタルマーケティングの可能性を追求していきます。

PROFILE
※所属および肩書きは取材当時のものです。
  • 株式会社三井住友銀行 ホールセール統括部 法人デジタル企画室 室長

    船山 明信氏

    1998年に住友銀行入行。法人・個人取引に従事した後、オペレーション効率化企画やコールセンター企画を経て、システム統括部で渉外用タブレット電子契約や邦銀初となるOffice365の導入プロジェクト、チャットボット等のAI先端技術活用プロジェクトを率いる。
    2018年よりシリコンバレーに赴任し、SMBCシリコンバレー・デジタルイノベーションラボの所長としてグローバルスタートアップとの協業、ビジネスモデルの調査を通じて、SMFGのデジタル・トランスフォーメーション、新規事業開発を推進。2025年4月よりホールセール統括部 法人デジタル企画室に着任、現職に至る。

  • 株式会社三井住友銀行 ホールセール統括部 法人デジタル企画室

    森本 祐吏氏

    2009年マーケティング会社に入社、総合広告代理店への出向を経て、2015年大手通信キャリアにてB2Bデジタルマーケティングの立ち上げを推進。2022年大手新聞社に入社、B2Bデマンドジェネレーション体制を構築。2024年よりSMBCに参画。デジタルマーケティングの全体最適及び、中小企業向けのマーケティングを担当。

  • 株式会社三井住友銀行 ホールセール統括部 法人デジタル企画室

    安藤 里奈氏

    2013年に三井住友銀行に入行。法人営業に従事後、個人向けインターネットバンキングアプリの企画開発を経て2023年より法人向けデジタルマーケティングを行う現職に参画。
    MAツールを活用した法人向けメール配信運用を立ち上げ、現在は運用の高度化やデジマインフラ整備に取り組んでいる。

人的資本経営
(Human Capital Management)

類義語:

  • タレントマネジメント,人材マネジメント

従業員を企業の重要な資本として捉え、その能力や多様性を最大限に活用することで、企業価値の向上を目指す経営手法。具体的には、採用、育成、働きがいの向上など、人的資本を戦略的に管理・活用することで、組織の成果や持続可能性を高める。

ウェビナー
(Webinar)

類義語:

  • オンラインセミナー,ウェブセミナー,バーチャルイベント

インターネット上で実施されるセミナーや講演会などのイベントを指す。Web(ウェブ)とSeminar(セミナー)を組み合わせた造語で、インターネットに接続されたデバイスを通じて、リアルタイムもしくは録画形式で講演を視聴したり、質疑応答に参加することができる。

ナーチャリング
(Nurturing)

類義語:

  • リードナーチャリング,リード育成,見込み顧客育成

マーケティングにおいて、見込み顧客(リード)との関係を徐々に構築・強化し、最終的な購買決定へと導くプロセスを指す。潜在顧客に対して適切なタイミングで価値ある情報を提供し続けることで、信頼関係を築き、購買意欲を高める手法。

インサイドセールス
(Inside Sales)

類義語:

電話、メール、オンラインツールなどの非対面形式で顧客とのコミュニケーションを行い、営業活動を進める手法。主に潜在顧客のニーズを掘り起こし、商談機会を創出する。フィールドセールス(直接訪問型の営業)と協力しながら、効率的かつコスト効果の高い営業活動を実現する。

カーボンニュートラル
(Carbon Neutral)

類義語:

  • 脱炭素

温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること。「全体としてゼロに」とは、「排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする」ことで、現実には温室効果ガスの排出量をゼロに抑えることは難しいため、排出した分については同じ量を吸収または除去する。

AI
(artificial intelligence)

類義語:

  • 人工知能

コンピュータが人間の思考・判断を模倣するための技術と知識体系。

電子帳簿保存法
(Law on Book and Record Keeping through Electronic Methods)

類義語:

紙での保存が義務づけられている帳簿や書類を電子データで保存できるようにした法律。保存方法は、電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引の3つに区分されている。

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