第2章
ビジネスモデル改革とグループ・グローバル経営の本格展開
1.新体制の発足とグループ経営の強化
三井住友銀行が発足して10年の節目にあたる2011年4月1日、北山禎介三井住友フィナンシャルグループ社長および奥正之三井住友銀行頭取がそろって退任し、2005年4月よりそれぞれ兼務していた三井住友銀行取締役会長および三井住友フィナンシャルグループ取締役会長として、業務執行の監督に専念することとなった。
これに伴い、同日、三井住友銀行取締役兼専務執行役員・三井住友フィナンシャルグループ取締役であった宮田孝一が三井住友フィナンシャルグループ取締役社長(三井住友銀行取締役)に、三井住友銀行取締役兼専務執行役員・三井住友フィナンシャルグループ取締役であった國部毅が三井住友銀行頭取兼最高執行役員(三井住友フィナンシャルグループ取締役)に就任し、3代目の経営トップとして、「第2の10年」の船出にあたり舵を取ることとなった。
宮田は、1953年(昭和28年)生まれ、徳島県出身。1976年に三井銀行に入行、三井住友銀行発足後は市場資金部長となり、2003年に執行役員に就任、市場営業統括部長兼市場資金部長を委嘱された。2006年三井住友銀行常務執行役員、2009年三井住友銀行取締役兼専務執行役員、2010年三井住友フィナンシャルグループ専務執行役員、同取締役に累進、この間、ほぼ一貫して市場営業部門を担当する傍ら、投資銀行部門ならびに人事部副担当役員を歴任、2010年には三井住友銀行のリスク管理部門、三井住友フィナンシャルグループの企画部、財務部などを担当した。
國部は、1954年(昭和29年)生まれ、東京都出身。1976年に住友銀行に入行、三井住友銀行発足後は大阪駅前法人営業部長、財務企画部長を歴任した。2003年に執行役員に就任し、引き続き財務企画部長、その後、経営企画部長を委嘱された。2006年三井住友銀行常務執行役員、2007年三井住友フィナンシャルグループ常務執行役員、同取締役、2009年三井住友銀行取締役兼専務執行役員に累進、この間、一貫して三井住友銀行および三井住友フィナンシャルグループの企画関連各部を担当した。

新体制の発足に際して、宮田と國部は連名で対外メッセージを公表し、お客さまへの円滑な資金供給やコンサルティング、経営課題解決のためのアドバイスなど、金融機関の本来的な機能の提供が我々の使命であり、グローバル対応力をさらに高め、グループ各社の連携と機能の強化を進めていく方針を明らかにした。そのうえで、「先進性」「スピード」「提案・解決力」の極大化を通じて、「お客さま、社会から最高の信頼を得られ、世界に通じる金融グループ」の実現を引き続き目指していく、と述べた。
宮田は、就任後初めて開催された2011年4月の部店長会議において、次のように所信を述べ、業務推進、経営管理の両面でグループ経営の強化を進める決意を明らかにした。
三井住友フィナンシャルグループ社長として、まず申し上げたいのは、従来以上にグループ経営を強化していきたいということです。三井住友銀行の発足から10年間、経営トップ二代に亘りグループ戦略を推進してこられた中で、我々は「複合金融グループ」として大きくウイングを広げてまいりました。(中略)これからの10年を展望しましても、(中略)最終的に勝負を決するのはグループの総合力です。グループが一体となって多面的な切り口から顧客に受け入れられる金融商品・サービスを複合的に提供していく必要があると考えております。また、規制面でも、2013年からのバーゼルⅢの導入などによって、アセット効率、資本効率、流動性管理等の目線が引き上げられますが、これら規制は、すべてグループベースでの適用となります。(中略)こうした流れに確りと対応するためには、2009年度に実施した2度の増資によって強化された貴重な資本を大事に活用するという観点からも、グループ全体としての最適な資源配分の実現や、リスク管理の強化に今まで以上に注力する必要があると考えております。
要するに、これからの10年、新たな金融秩序の下では、業務推進、経営管理の両面で、「グループ経営」の進化が問われるということです。
同じ部店長会議において、國部は、喫緊の課題として、①国内における確固とした収益基盤の構築、②資本効率・資産効率の改善の観点から、さらなるリスク・リターンの向上に向けて各事業のリターン水準を引き上げるとともに、質の高い事業ポートフォリオを構築していくこと、③バーゼルⅢの導入を控え、規制上求められる資本水準をいち早く確保するため、ボトムライン収益を安定的に積み上げていくこと、の3点を指摘した。そのうえで、経営における指針として以下の5点を挙げた。
- お客さま本位を徹底し、常に新しい価値を創造する
- 「質」の追求により競争力を高め、他との差別化を図る
- 真のグローバル化に挑戦し、強みとする分野でトップティアを目指す
- Team SMBCとしての一体感を高め、プロアクティブで活力の溢れる銀行を目指す
- 人材を育成し、自由闊達な銀行を創る
國部は、これら指針を反映した中期経営計画(2011~2013年度)の概要を説明した後、次のように締め括った。
今回の大地震による影響が、今後様々な形であらわれてくるとみられる中、ある意味、大変厳しい「第2の10年」の船出となったわけですが、改めて皆さんと共有しておきたいのは、こうした変化の激しい、難しい時代だからこそ、変化の先を読み、「攻め」と「守り」を機動的に切り替えながら、「Team SMBC」としての一体感を持って、勇気を持って前進していけば、必ずや戦いに勝ち抜いていける、ということであります。(中略)宮田社長と二人三脚で、そして、皆さんと共に、さらに輝かしい三井住友銀行の歴史を刻んでいくために、全力を傾けて参ります。
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第1章不確実性が増す外部環境
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第2章新たなガバナンスの下でのグループ・グローバル経営の強化
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第3章「カラを、破ろう。」
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第4章「お客さま本位の業務運営」の徹底
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第5章リテール金融ビジネスにおけるビジネスモデルの変革
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第6章ホールセールビジネスにおける真のソリューションプロバイダーを目指して
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第7章グローバル・プレーヤーとしての進化
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第8章高まる不透明感の下での市場ビジネスの進化
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第9章アセットマネジメントビジネスの強化
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第10章デジタル戦略の本格展開
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第11章G-SIBsとしての内部管理態勢の確立
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第12章業務インフラの高度化
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第13章グループ経営を支える人事戦略
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第14章持続可能な社会の実現に向けた取り組み
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第15章「コロナ危機」への対応
- おわりに