(2)SMBC日興証券創業100周年

2018年はSMBC日興証券にとって、SMBCフレンド証券との合併も含め記念すべき年となった。それは、SMBC日興証券創業100周年であった。SMBC日興証券は1918年7月7日、創業者である遠山元一が川島屋商店を東京・日本橋に設立したことに始まる(注22)

SMBC日興証券は、2018年1月より創業100周年の記念事業を展開した。具体的に、まず、2種類のポスターを作成した。一つは100周年とSMBCフレンド証券との統合を告知するもので(下記画像)、もう一つは100年の歴史と関連する社会の出来事を振り返る内容だった。また、記念バッジを制作し全役職員・関係会社社員に配布。ホームページには100周年記念の特別サイトを開設した。さらに新聞広告とテレビCMを制作した。

(画像)SMBC日興証券のコーポレートカラーであるコーディアルレッドとSMBCフレンド証券のコーポレートカラーであるフレッシュグリーンが同じ道に向かい、ふたつがひとつになって前進・上昇する形でSMBC日興証券とSMBCフレンド証券との統合を表現
100周年・SMBCフレンド証券との統合告知ポスター

テレビCMは、未来の社会のためになるシンボリックな技術開発や、新たなソリューション提供を行っている会社のドキュメンタリー映像に合わせて、キーメッセージ「DISCOVER GOOD COMPANY」を伝えるものであった。また、SMBC日興証券のメッセージであることを印象づける効果などを狙い、ナビゲーターとしてブランドパートナー(元メジャーリーガーのイチロー、女優の天海祐希)を起用した。

こうしたCMの目的は次の2つであった。1つ目は、100周年をきっかけに、経営理念で謳う「健全な金融仲介機能を果たし、市場・社会の発展に貢献する」という証券会社の本質を真正面から広く社会に発信することにより、SMBC日興証券の存在感を向上させることであった。2つ目は、証券会社の本質の再確認により役職員の一体感、ロイヤリティを向上させることであった。創業100周年あたる2018年7月7日には新聞広告を打ち、引き続きテレビCM、ホームページ、LINE公式アカウント、お客さま向けの配布物を展開した。その前日、清水社長は動画メッセージを含め役社員に以下のようなメッセージを送った。

当社が100年続く会社になることができたのは、諸先輩の時代から今日に至るまで「得意先との共存共栄」、「親切で正直」という創業の精神を大切にし続け、真摯に取り組んできたことがお客さまに評価されてきたからだと思っています。(中略)今こそ、創業者の精神に立ち戻り、“どんな時もお客さまと共にあり続けること”、すなわち“いっしょに明日のこと。”この精神を、次の100年に残る、“我々のDNA”として刻み込む取り組みを続けていかなければなりません。(中略)新しい100年を最初に作り上げていくのは、間違いなく、今ここにいる役社員の皆さんです。100周年を機に、長年当社をご愛顧いただいているお客さまに対し、深く感謝すると同時に、お客さまとともに歩む新たな100年を、役社員全員で踏み出しましょう。

2020年4月、SMBC日興証券の清水社長が取締役会長となり、近藤雄一郎が社長に就任した。近藤は1986年日興証券入社のいわば生え抜きであり、激変する経営環境下、SMBC日興証券の経営の舵取りを担うこととなった。近藤は社長就任に際し、全役社員にメッセージを発出し、次のように述べた。

私は、SMBC日興証券を、“想像力と実行力を兼ね備えた社員であふれる会社”にしたいと考えています。変化に立ちすくんだり、あらがったりするのではなく、変化を価値創造のチャンスとして前向きに受け入れ、スピード感をもって自らの成長の原動力に変えていく発想が大切だと考えています。「変化を楽しむ」が行動の指針です。

同月、SMBC日興証券は、外部環境・業務環境の変化およびプリンシプルベースでのコンプライアンス意識向上の必要性などを踏まえ、「行動規範(Code of Conduct)」(注23)を改定し、全役社員への浸透を図った。具体的には、「健全な資本市場の発展を、豊かな人生・社会の実現につなげる」という社会的使命(Mission)と、「お客さまと共に発展し、最高の信頼を得られる会社」という目指す姿(Vision)を実現するため、お客さまや社会との信頼関係を保つための大切な3つの価値観(Value)として「共存共栄」「革新性」「親切で正直」を掲げ、それらの価値観に基づき具体的に行動するための行動指針を定めた。