(2)国内外国為替業務の推進強化
三井住友銀行は、1998年から2002年にかけて営業店の外国課を順次廃止するとともに、外国為替に関する事務をその100%子会社であるSMBCインターナショナルオペレーションズ(注11)に委託してきた。事務の集中により効率的なオペレーションが可能となる一方、営業店が実務から遠ざかるなかで、外為スキルを持ったフロント人材(注12)の高齢化が次第に進展することとなった。2008年度より一部の法人営業部に、グローバル企業やコア外国為替取引先を中心に所管する「グローバルビジネスグループ」を新設したが、2010年代に入り、日本企業の海外進出が加速し、アジア域内の貿易量が急増すると、外国為替業務の推進強化(注13)と外為スキルを持った人材の継続的な育成ニーズが強まった。
そこで三井住友銀行は2014年10月、SMBCインターナショナルオペレーションズを吸収合併し、同社の業務を銀行本体に移管した。貿易実務のノウハウや日常的な取引におけるお客さまとの接点を有する同社を銀行本体に取り込むことで、①お客さま対応力を強化して外国為替業務をより強力に推進するとともに、②総合職が実務も経験することで、将来コアとなる外国為替業務推進人材を育成することを目的としていた。
具体的には、まず、グローバル・アドバイザリー部の部内部として「グローバルサービス推進部」を設置し(注14)、SMBCインターナショナルオペレーションズの本社機能等を移管した。また、その営業店として「グローバルサービス部」を設置し、同社の事務執行拠点である東京、名古屋、大阪の「外為センター」を移管した。これに伴い、グローバルサービス部は、外為事務の執行のみならず、お客さまに積極的に持込勧奨や実務アドバイスを行うなど、フロントによる業務推進支援等も行う体制とした(注15)。同時に、グローバルサービス推進部所属の「外為業務エキスパート」が、グローバル・アドバイザリー部の営業店駐在と一体となって業務推進を行うこととした。
人材育成についても、2014年10月、若手総合職をトレーニーとしてグローバルサービス部とグローバルビジネス推進部に1年間派遣する「コアトレーニー制度」を新設し、コア人材の育成を進めた(注16)。2017年10月からは、「外為業務推進トレーニー制度」をスタートさせ、BC職(Iコース)を対象に外国為替業務推進人材としての育成も行った。
外国為替業務は法人取引における重要な業務であるものの、その専門性ゆえに営業店における法人担当者の知識やスキルレベルは不足しがちで、継続的な強化を図る必要があった。そこで、2019年4月、グローバルビジネス推進部に「外為研修指導チーム」を新設し、「外為スキル育成プログラム」を策定したうえで、人事部、ホールセール統括部、人事部研修所と連携して指名研修や全職種を対象とした公募研修を実施することとした。同時に、インターネット上で視聴可能な「SMBC Group eCampus」やイントラネット上の「商品データベース」において、学習コンテンツや各種資料を豊富に掲載し、各担当者が必要な知識やスキルを主体的に学べるようにした。2020年度からは、法人営業部の総合職J層(旧BC職)の外国為替事務スキルの育成と、各拠点の非効率な外国為替事務の削減を目的に、グローバルビジネス推進部による臨店指導がスタートした。
外国為替業務の推進強化や人材育成と並行して、インターネットを通じた法人向け外国為替サービス「Global e-Tradeサービス」(略称:Gets)(注17)の機能や利便性の継続的な強化を進めた(注18)。2015年3月には、機能を限定した「Getsデビュー」を新規契約後、最大4ヵ月間、月額手数料無料で利用できるサービスを導入したほか、2020年10月からは月額手数料を無料として事業者の利用を促した。

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第1章不確実性が増す外部環境
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第2章新たなガバナンスの下でのグループ・グローバル経営の強化
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第3章「カラを、破ろう。」
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第4章「お客さま本位の業務運営」の徹底
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第5章リテール金融ビジネスにおけるビジネスモデルの変革
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第6章ホールセールビジネスにおける真のソリューションプロバイダーを目指して
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第7章グローバル・プレーヤーとしての進化
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第8章高まる不透明感の下での市場ビジネスの進化
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第9章アセットマネジメントビジネスの強化
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第10章デジタル戦略の本格展開
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第11章G-SIBsとしての内部管理態勢の確立
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第12章業務インフラの高度化
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第13章グループ経営を支える人事戦略
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第14章持続可能な社会の実現に向けた取り組み
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第15章「コロナ危機」への対応
- おわりに