(2)キャッシュレス決済戦略への布石

三井住友カードは、2012年11月に米カリフォルニア州シリコンバレーに米国市場調査室を設置した。これは情報収集が主たる目的であったが、米国においてフィンテックが注目され始めた初期段階での拠点設置自体、先進的な対応であった。米国の動向に早くから注目していた同社の取り組みは、スクエア(Square, Inc.)との資本・業務提携など、その後のキャッシュレス決済戦略展開への重要な布石となった。

スクエアは2009年にツイッター(Twitter, Inc.)の共同創業者であったジャック・ドーシーが、ガラス工芸作家であるジム・マッケルビーと設立したフィンテック企業である。小型の端末をスマートフォンやタブレット端末に接続するだけで使用できる決済サービスで、端末価格が安く、売上代金の資金化が早いなど小規模事業者にとってメリットの大きい仕組みだった。三井住友カードは、2013年5月からスクエアとの提携に基づくクレジットカード決済サービスを開始した。その後、インバウンド需要対応の促進など政府のキャッシュレス推進策も追い風にしながら、2019年3月にスクエアとの提携を強化し、端末の無償提供や決済手数料無料キャンペーンなどを実施した。さらに、消費税率引き上げに合わせた「キャッシュレス・ポイント還元事業」(注3)などに向け、2019年4月からは三井住友銀行でもスクエア加盟店契約の媒介業務を開始するなど、小規模事業者のキャッシュレス化を支援していった。

(写真)小さな端末スクエア・リーダーによる決済のイメージ写真
Square Readerによる決済イメージ