(3)財務目標と資本政策

当社は、中期経営計画(2017~2019年度)において2019年度の財務目標を、収益性の向上および国際金融規制の強化に早期に対応して健全性を確保する観点から、ROE、経費率、普通株式等Tier1比率の3つを掲げた。資本蓄積を進めるなかでROE7%を最低ラインとして確保するとともに、経費コントロールの徹底により、経費率の低下トレンドを定着させ、2020年度以降、早期に60%程度への改善を目指していくこととした。健全性については、バーゼルⅢの最終化に伴い、2020年度にリスクアセットが現状比25%程度増加する前提で、最終化時ベースの普通株式等Tier1比率(除くその他有価証券評価差額金)で10%程度を目指すこととした。

図表2-5 ROE、経緯率、普通株式等Tier1比率を財務目標に設定
(図表2-5)当社連結財務目標(2019年度)

資本政策の基本方針としては、①健全性確保、②株主還元強化、③成長投資をバランスよく実現することとし、配当は累進的配当(減配せず、配当維持もしくは増配を実施すること)とし、連結当期純利益に対する配当性向40%を目指すこととした。投資家からの要望が強かった自己株取得については、バーゼルⅢの最終化の内容が明確にされた後、資本状況や業績見通し、株価水準、成長投資機会等を考慮したうえで方針を決定することとした。

その後、2017年12月にバーゼルⅢが最終化され、最終的な当社のリスクアセット増加影響は、中期経営計画策定時に想定していた通りの増加にとどまると試算された。さらに、2017年度の連結当期純利益が期初予想を1,000億円強超過し、また、2018年度も堅調な業績が続き中期経営計画対比上振れペースで推移していたこと、さらには、2018年度中に傘下の地方銀行の持分法適用会社化やリース共同事業の再編等のインオーガニック施策を含むリスクアセットコントロールを行うことで、2019年3月末には普通株式等Tier1比率は目標とする10%程度に1年前倒しで到達するとの目途が立った。健全性の確保のみならず、株主還元強化や成長投資にも力点を置ける状況となったことで、当社は、2018年5月、資本政策と株主還元方針の見直しを実施した。

新たな資本政策の柱は、①健全性確保、株主還元強化、成長投資をバランスよく実現する、②株主還元は配当を基本とするが、健全性確保を前提に、自社株取得も機動的に実施する、の2点であった。自社株取得については、たとえば一過性の要因で当期純利益が業績目標を上振れた場合、健全性確保を前提に、資本の状況、業績動向、当社株価の水準、成長投資機会、資本効率向上等を考慮して総合的に判断し、機動的な実施を検討していくこととした。また、配当は、持続的な利益成長を勘案し累進的に行うものとし、配当性向は2020年4月に始まる次期中期経営計画期間中を目途に40%を目指すこととした。

図表2-6 健全性確保、株主還元強化、成長投資をバランスよく実現し、自社株取得も機動的に実施する
(図表2-6)資本政策の基本方針

当社は、この新たな資本政策、株主還元方針を踏まえ、2018年5月、700億円の自己株取得を公表した。さらに、2019年5月には、前年度の700億円から300億円の増額となる1,000億円の自己株式取得を発表した。これらは、普通株式等Tier1比率が目標の10%程度に到達して健全性確保に目途がついたこと、引き続き順調に利益計上が見込まれることに加え、 足許の割安な株価水準、成長投資機会、ROE向上効果等を踏まえたうえで総合的に決定したものであった。1株当たり配当金についても、2017年度以降、3期連続で累計40円の増配を実現し、2019年度の連結配当性向は37.0%と2016年度の29.9%から大きく上昇した。