(2)デジタル化の推進によるお客さまサービスの向上

マーケティング戦略と合わせて注力したのが、デジタル化の推進によるお客さまサービスの向上である。2017年4月、リテールマーケティング部IT戦略室をリテールIT戦略部とし、デジタル化推進を加速させた。その軸となるのが、個人向けリモートサービス「SMBCダイレクト」における機能拡充および利便性向上である。

SMBCダイレクトで手続可能な取引については、喪失届等の諸届受付(2017年5月)、外国送金サービスの申込み(2018年6月)、クレジットカードの申込み(2018年9月)、NISA口座等の開設申込み(2019年3月)などの機能を順次追加した。

併せて、店舗改革と連動してお客さまのデジタルチャネルの利用を促進するために、本支店宛て振込手数料の無料化(2018年7月)、電子メールお知らせサービスの利用料無料化(2019年4月)などを実施するとともに、SMBCダイレクトを普通預金口座に標準搭載して申込手続を不要とするなど、利便性の向上を図った。

また、2016年前後を境にわが国におけるスマートフォンの世帯保有率が、パソコンをキャッチアップ、逆転(注23)したことを受け、スマートフォンを通じたSMBCダイレクト利用の機能拡充・利便性向上にも注力した。

スマートフォン向けの「三井住友銀行アプリ」は2013年2月にサービス提供を開始。その後、生体認証機能の導入(2017年7月)、デビットカードの即時発行・利用照会等の機能追加、パスワードカードアプリの統合(以上、2019年3月)、三井住友カードの会員向けインターネットサービス「Vpass」との連携、三井住友カードのクレジットカード即時発行サービスの開始(以上、2020年3月)など、次々と機能を拡充した。

デジタルチャネルの利便性向上と、店舗改革の一環でその利用促進を図ったこと、さらに2020年は新型コロナウイルス感染症流行の影響もあり、SMBCダイレクトの利用者は2017年度以降に急増し、2020年度の利用者数は、2011年度対比2倍以上の約817万人にまで拡大した。

図表5-10 SMBCダイレクトの利用者数は、店舗改革を開始した2017年度以降急増
(図表5-10)SMBCダイレクト利用者数の推移

デジタル化の推進に関連して特筆すべきことは、大手銀行で初めてインハウスデザイナーを採用したことである。三井住友銀行では、2016年からインハウスデザイナーを含めた外部人材を積極的に採用・活用している(注24)

三井住友銀行がインハウスデザイナーを採用している理由は、これまで以上に使ってもらえるサイト、これまで以上に使ってもらえるアプリケーションとするためには、ユーザー目線でのモノ作りが不可欠との考えによるものである。銀行員の常識にとらわれない発想をしつつ、銀行員の目線とユーザーの目線を併せ持って企画を推進していくために、インハウスデザイナーを擁している。

銀行内部にデザイナーがいることのメリットとしては、大きく2点挙げられる。一つは、システム開発にあたって、部門全体がこれまで以上にお客さま目線やUX(ユーザー・エクスペリエンス)(注25)にこだわるようになったこと。もう一つは、金融とデザインの双方の知見に基づく最適なデザインが設計できるようになったことである。

実際、2019年3月に「三井住友銀行アプリ」「三井住友カードVpassアプリ」を全面リニューアルした際には、三井住友銀行のインハウスデザイナーが中心となって、三井住友カードと密接に連携しながらプロジェクトを推進。大規模なユーザビリティテストを踏まえて開発を行ったことでお客さま体験に即した利便性を提供することができた。その結果、「三井住友銀行アプリ」と「三井住友カードVpassアプリ」は、公益財団法人日本デザイン振興会が主催するグッドデザイン賞を受賞した。

(画像)2019年度グッドデザイン賞を受賞した「三井住友銀行アプリ」と「三井住友カード ブイパスアプリ」の画像
2019年度グッドデザイン賞を受賞したアプリ