3.「SMBCグループ サステナビリティ宣言」

(1)「SMBCグループ サステナビリティ宣言」とその実践

2020年4月1日、当社は、グループ経営理念に「社会課題の解決を通じ、持続可能な社会の実現に貢献する」との一文を追加するとともに、「SMBCグループ サステナビリティ宣言」(以下、サステナビリティ宣言)を公表した。サステナビリティ宣言は、「サステナビリティ」を「現在の世代の誰もが経済的繁栄と幸福を享受できる社会を創り、将来の世代にその社会を受け渡すこと」と定義し、三井、住友の先人が重んじたサステナビリティへの意志を受け継ぎ、SMBCグループとして「環境」「コミュニティ」「次世代」を重点課題とし、サステナビリティの実現を目指していくことを掲げた。

<SMBCグループ サステナビリティ宣言>

我々、SMBCグループは、三井 、住友にルーツを持つ企業グループとして、先達が重んじたサステナビリティへの意志を受け継ぎ、社会において我々が重点的に取り組む課題を設定のうえ、サステナビリティの実現に向けて行動していきます。

なお、我々は「サステナビリティ」を「現在の世代の誰もが経済的繁栄と幸福を享受できる社会を創り、将来の世代にその社会を受け渡すこと」と定義します。

<現状認識と我々の役割>

現在、我々は、我々を取り巻く社会が、大きな課題に直面し、持続的かつ強靱な社会への移行のために、早急且つ大胆な行動と社会の変革が求められていると認識しています。このような認識のもと、我々は、国連が定める持続可能な開発のための目標である“SDGs”の達成や社会課題の解決を目指し、金融事業を営む者として、お客さまをはじめとするステークホルダーと対話し共に行動することにより、社会をより良いものへ変革することに貢献していきます。

特に、「環境」は社会の持続可能性の前提となる世代間共有の財産です。一度破壊された環境を取り戻すのは容易ではなく、気候変動をはじめとする環境課題の解決にはイノベーションが不可欠だと認識しています。そして、現在の世代は、将来の世代に現状の環境を遺す責務があるとも認識しています。このような認識のもと、我々はパリ協定の精神を支持し、環境課題の解決に貢献していきます。

<設定する重点課題とその背景>

「サステナビリティ」は、我々の源流となっている三井、住友の先達たちが、400年以上にも亘り、連綿と経営の根底に据えてきた大義であり、現在の我々の礎となっています。

三井の先達は、1673年に呉服商として江戸に進出し、当時の商慣習にイノベーションをもたらし、江戸町民のコミュニティに根付く新たなビジネスモデルを確立しました。また1683年に両替業に進出し、江戸時代には業界屈指の両替商として、明治以降は銀行として、三世紀余、何世代にも亘り日本そして世界の経済活動の基盤となる金融インフラの重要な担い手となってきました。

住友の先達は、1600年頃、当時としては最先端の銅の精錬方法を開発し、その技術革新により日本は、江戸時代の二世紀余、何世代にも亘り、世界有数の銅産出国でありました。一方で、地球環境へも早くから目を配っています。1894年、先達の一人は自社の銅山に登った際に、荒れた山を見て、「天地の大道に背く行い」と憂い、植林により、将来の世代に山の豊かな緑を、地域コミュニティに安心・安全な生活をもたらしました。

このような、三井、住友の先達たちのサステナビリティの実践を踏まえ、我々は、緑の地球を守る企業市民として「環境」を、そして社会の一員として「コミュニティ」、「次世代」を重点課題とし、サステナビリティの実現を目指して参ります。

同時に当社は、サステナビリティ宣言を遂行するための、2030年までの10 年間の計画として「SMBC Group GREEN×GLOBE 2030」(注31)を公表した。「SMBC Group GREEN×GLOBE 2030」は、「お客さまとともに、人と地球の未来を創る」を基本コンセプトにSMBC グループとして取り組むべき施策を定めたもので、環境・社会課題の解決に向けて、グリーンファイナンス(「環境関連分野」に特化したサステナブルファイナンス)を2020年度から2029 年度までに 10 兆円(注32)実行することを目標に掲げるなど、複数のKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)の進捗管理を通じてその推進を図ることとした(図表14-6)。

そこで当社は、ホールセール事業部門ホールセール企画部内にサステナブルビジネス推進室を設置し、各事業部門とも連携し、お客さまの事業戦略に対してグループ全体でソリューションを提供していく体制とした。さらに、環境・社会課題解決に取り組むコミュニティ「GREEN×GLOBE Partners」を立ち上げ、多くのパートナー企業の賛同を得て、気候変動を含めた社会的課題の解決に向けた活動を開始した。2020年7月には専用のWebサイトを立ち上げ(注33)、環境・社会課題に関する積極的な情報発信を行っている。

図表14-6 サステナビリティ宣言を遂行するための、2030年までの10 年間の計画として、グリーンファイナンスおよびサステナビリティに資するファイナンス実行額2030年までに30兆円などの目標を掲げる
(図表14-6)「SMBC Group GREEN×GLOBE 2030」の3つの柱と10年間の長期目標

気候変動問題が国内外で喫緊の課題として認識されるなか、日本政府は2020年10月、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするとの方針を公表した(「2050年カーボンニュートラル」宣言)。これを受け、当社は2021年5月、気候変動問題への対策を強化した。具体的には、「気候変動に関する現状認識とSMBCグループの姿勢」として、政府の2050年カーボンニュートラル宣言を支持するとともに、パリ協定の目標に沿って温室効果ガス排出量削減に真摯に取り組むことを宣言した。そのうえで気候変動問題を「SMBC Group GREEN×GLOBE 2030」の3つの柱(注34)にまたがる大きな取組課題として位置づけた。

さらに、2050年カーボンニュートラルに向けた気候変動対策の長期行動計画を「SMBCグループ気候変動対策ロードマップ」と称したうえで、短期的、中期的に実行する具体的な施策(アクションプラン)を策定していくこととした(図表14-7)。第一段階として、中期経営計画(2020~2022年度)中に着手、実行する施策パッケージを「アクションプランSTEP1」とし、「SMBCグループの温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)排出量を2030年にネットゼロにする」目標を新たに掲げるとともに、グリーンファイナンス実行額10兆円というGREEN×GLOBE 2030の目標を、「2020年度から2029年度のグリーンファイナンスおよびサステナビリティに資するファイナンス実行額30兆円(うちグリーンファイナンス20兆円)」と大幅に増額した。アクションプランSTEP1を着実に実行するため、当社ではグループ内横断的なワーキンググループを設置してグループ全体で気候変動問題に取り組むこととしている。

2021年8月、SMBCグループは『SMBCグループ TCFDレポート2021』のなかで、パリ協定の目標に沿って、投融資ポートフォリオ全体の温室効果ガス排出量を2050年までにネットゼロとすることにコミットした。目標の達成に向け、今後、投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量をセクターごとに把握、その中長期的な削減目標を設定したうえで、実際に削減を進めていく予定である。

図表14-7 2050年カーボンニュートラルに向けた気候変動対策の長期行動計画の第一段階として、「アクションプランSETP1」を公表
(図表14-7)SMBCグループ気候変動対策ロードマップ