第7章
グローバル・ビジネスの積極的展開
1.グローバル・ビジネスの反転攻勢
三井住友フィナンシャルグループ(当社)は2006年10月に公的資金を完済し、2007年度よりスタートした中期経営計画で本格的にグローバル・ビジネスを拡大する方針を掲げた。国内経済が低成長となるなか、グローバル・ビジネスが国内ビジネス対比、より高い成長性・収益性を見込むことができる、との判断があった。また、経営健全化計画の下で海外資産を大幅に削減してきたこともあり、国際的に活動する銀行のトップ・グループへの早期復帰を目指すこととした。ところが、2007年夏から世界金融市場が不安定となり、2008年秋には世界金融危機が生じて業務環境は激変した。三井住友銀行は、世界金融危機への機動的な対応、ならびに信用劣化兆候の早期把握に注力することとなった。
しかしながら、世界金融危機は、振り返ってみれば、当社グループ(注1)がグローバル・ビジネスを拡充する大きな契機にもなった。三井住友銀行は、保有していたサブプライムローン関連証券化商品の大半を2007年度上期に売却しており、サブプライムローン関連の直接的な損失は限定的であった。景気の急速な悪化に伴う信用コストの増加や株価の下落は、三井住友銀行にも大きな影響をもたらしたが、世界金融危機によって大きな痛手を被った欧米金融機関対比でみれば、損失は小さかった。とりわけ欧州系金融機関は、その後顕在化・長期化した欧州債務危機の渦中で、資産圧縮や事業売却を余儀なくされた。三井住友銀行は、2009年度中に2度の普通株式増資を行って資本基盤を強化したこともあり、2010年度以降、欧米金融機関のシェアを奪う形でグローバル・ビジネスを積極的に拡充していった。
地域別には、成長著しいアジア新興国に着目した。アジアでは、日系企業や欧米多国籍企業の進出が活発化していたうえ、地場企業の成長や国民の所得水準の高まりのなかで、金融ニーズは拡大傾向にあった。そこで三井住友銀行は、2011年度からの中期経営計画において、アジアを中心とする海外の成長を捕捉し、海外収益力を強化するとし、2010年度見込み22.3%(注2)の海外収益比率(注3)を2013年度までに30%程度まで増やす、という目標値を掲げた。事業買収などのインオーガニック戦略も組み合わせて必要な資源を積極的に投入していく方針の下、海外収益比率は2012年度には30.2%へ上昇し、中期経営計画で目標とした「海外収益比率30%程度」を2012年度に1年前倒しで達成することができた。
当社は2014年度からの中期経営計画においても、「10年後を展望したビジョン」として「アジア・セントリック」や「真のグローバル化」の実現を掲げた。三井住友銀行の国際部門はその下で、重点施策として、①アジア・セントリックの実現に向けたオーガニック成長戦略の推進、②アジア新興国におけるマルチフランチャイズ戦略の推進、③顧客対応力強化・収益性改善に向けた業務推進体制の構築、およびプロダクトの拡充、④持続的成長可能な外貨アセットビジネスを支える枠組み構築、⑤グローバルバンクに相応しい経営基盤の整備、を進めた。
オーガニック成長戦略の推進とインオーガニック戦略の組み合わせに加えて、ビジネスモデル変革や外貨調達力の強化、人材育成など、多面的な取り組みの結果、2016年度までに海外貸出残高は2010年度対比で大幅に増加した。

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第1章不確実性が増す外部環境
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第2章新たなガバナンスの下でのグループ・グローバル経営の強化
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第3章「カラを、破ろう。」
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第4章「お客さま本位の業務運営」の徹底
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第5章リテール金融ビジネスにおけるビジネスモデルの変革
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第6章ホールセールビジネスにおける真のソリューションプロバイダーを目指して
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第7章グローバル・プレーヤーとしての進化
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第8章高まる不透明感の下での市場ビジネスの進化
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第9章アセットマネジメントビジネスの強化
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第10章デジタル戦略の本格展開
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第11章G-SIBsとしての内部管理態勢の確立
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第12章業務インフラの高度化
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第13章グループ経営を支える人事戦略
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第14章持続可能な社会の実現に向けた取り組み
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第15章「コロナ危機」への対応
- おわりに