2.決済ビジネスの戦略的強化

(1)国内基幹商品の機能強化と利用の推進

三井住友銀行は、2003年3月より法人向けインターネットバンキングとして「パソコンバンクWeb21(以下、Web21)」(注6)を提供し、機能の拡充やセキュリティの強化を継続的に実施しながら、その利用を推進してきた。2015年3月からは、Web21の機能限定版である「Web21デビュー」について、新規契約後、最大4ヵ月間、月額手数料無料で利用できる「無料お試し期間」を設けてその利用を促した。2018年10月には、全銀システムの稼働時間が拡大(24時間365日稼働)されたことを受け、平日夜間や休日の振込・振替、取引口座照会を可能とした。

もっとも、EBの利用開始手続が煩雑、ないしはEBよりもATMのほうが手数料が安いことなどを理由に、店頭窓口やATMで多数の振り込みを行う事業者が依然多かった。そこで、2019年4月、月額手数料や本支店間の振込手数料を無料、他行宛て振込手数料を安価な水準に設定する一方、機能を「Web21デビュー」よりも限定した「Web21ライト」を導入し(注7)、法人振込のリモート化を一層進めて店舗改革(注8)を加速させることとした。

2020年4月からは、リテール部門の営業店として「リモート決済営業部」を新設し、設立後間もない法人や小規模事業者を対象として、「Web21ライト」などのデジタルやリモートチャネルを通じたマスマーケティングを実施した。2020年5月には、Web21やインターネット経由の海外送金・貿易取引システム「Global e-Tradeサービス」(略称:Gets)、インターネット経由の為替予約・外貨預金振替システム「i-Deal(アイディール)」、「でんさい」等の新規申込みやサービス内容変更、解約の申込みを、法人のお客さま向けインターネット窓口「ValueDoor」で手続きできるようにして、利便性の向上と対面事務の削減、クロスセルの推進を図った。

また、三井住友銀行は2012年5月、「国内CMS(キャッシュマネジメントサービス)」(注9)のシステムを一新してその機能を強化するとともに、2018年2月にも機能強化を行い、利便性の向上と他行対比の優位性確保を進めた。

さらに、2013年2月、手形・振込に代わる新たな決済手段として、全銀電子債権ネットワーク(通称「でんさいネット」)(注10)の電子記録債権「でんさい」の取扱いがスタートすると、三井住友銀行は、新規のお客さまの獲得や取引深耕による顧客基盤拡充の絶好の機会として、でんさい指定口座の獲得と利用の推進に努めた(図表9-2)。

図表9-2 全銀電子債権ネットワーク、通称「でんさいネット」を通じた決済の仕組み
(図表9-2)「でんさいネット」を通じた決済