5.欧米におけるポートフォリオの多様化

(1)インオーガニック戦略の活用

2008年に始まる世界金融危機の後、欧州系銀行を中心に傘下の事業等の売却案件が増加した。他方、当社は2009年度の2度にわたる普通株式増資を経て、欧米銀行に比べて相対的に優位な財務基盤を有していたことから、2011年頃から海外業務拡大の手段として提携や買収(M&A)を選択肢の一つとして前向きに検討し始めた。高採算ビジネスの強化による収益拡大のみならず、グローバルに競争可能なレベルへ当社グループ全体の知見・経験を高めることを目指した。こうした提携・買収による戦略は「インオーガニック戦略」と呼ばれ、世界金融危機後、当社が海外ビジネスを拡大するにあたって重要な役割を担うこととなった。

M&Aにあたって投資判断の基準としたのは、①当社グループの戦略の方向性と合致し、リスクコントロールが可能、②十分な投資リターンが見込める、③当社グループ内のシナジー効果が見込める、④安定的な外貨調達が確保できる、の4点であった。

世界金融危機後に事業の縮小を進めていた欧州系銀行からは多くの売却案件が出たが、買収金額の引き上げや外貨調達制約などの理由で当社が買収を見送ったものもあった。最終的に買収に成功した大型案件には、2012年の航空機リース事業買収や2015年の欧州におけるLBOファイナンス事業買収などがある。これらは高採算ビジネスであると同時に、対象とする事業領域が多様であり、当社の海外ポートフォリオの分散に寄与した。