2.社会変化を先取りした店舗改革の断行

(1)店舗改革のコンセプト

三井住友銀行は2015年に、リテール統括部と事務統括部を中心に、有人チャネル改革プロジェクトチームを立ち上げ、店舗のあり方について検討を行った。その背景には、時代の流れが大きく影響していた。すなわち、デジタル化の進展によりリモート取引が増加する一方で、店頭に来店するお客さまが年々減少していた(図表5-4)。また、長引く超低金利や競争激化等によりリテールビジネスが薄ざや化し、トップライン収益が伸び悩むなかで、高額賃料や事務処理コストなど店舗の維持・運営にかかる負担が重くのしかかっていた。こうした傾向は2000年代後半から見られたが、2010年代には重要な課題の一つとなっていた。

図表5-4 1ヵ店1日当たりの来店顧客数は年々減り続け、2006年度を100とした場合、2020年度は37.5まで減少
(図表5-4)1ヵ店1日当たりの来店顧客数推移

プロジェクトチームにおいて現状の課題整理や海外視察など検討を行った結果、デジタル化が急速に進展しつつあったわが国の5年後・10年後を見据え、大胆な店舗改革を断行することとした。これは、欧米や一部アジア諸国のデジタル先進国において、バックオフィス業務の集約やリモートチャネルの拡充などにより、銀行の店舗のあり方が大きく変貌しつつあったことも踏まえた決断であった。そこで、一部拠点で試行(注12)を繰り返し実施し、課題点や問題点をあぶり出し、改革の細部を詰めていった。

店舗改革の大前提は、「お客さまの利便性やお客さま満足度の向上」につなげることである。銀行の都合により、お客さまにご迷惑・ご負担をお掛けしてしまっては、改革を実施する意味がない。お客さまの利便性向上とコスト構造改革の両立を目指して、「お客さまへのサービス提供の仕方を変える」「事務プロセスを変える」「店舗の在り方を変える」の3点をポイントに(図表5-5)、2017年度から3年間の中期経営計画期間において店舗改革を実施した。

図表5-5 店舗改革の3つのポイント、「お客さまへのサービスの提供の仕方を変える」「事務プロセスを変える」「店舗の在り方を変える」の3点について説明した表
(図表5-5)店舗改革のポイント

改革実施にあたっては、リテールビジネスの企画・推進・管理を担うリテール部門各部はもちろんのこと、事務やシステム、店舗管理など、関連する部署が多岐にわたることから、関連各部が情報共有、協議、進捗管理などを行う場としてステアリング・コミッティを設置。店舗改革などを推進するために2017年4月に設置したチャネル戦略部等を事務局に、改革を進めていった。