4.投資家ビジネスへの取り組み

三井住友銀行は、従来より投資銀行統括部プロダクト戦略室において銀行の既存アセットを活用した独自の投資運用商品を開発・販売し、投資家ビジネスの拡大およびアセットの削減に注力してきた。2012年4月には、投資家ビジネスの企画・推進・販売機能の大半をシンジケーション営業部に移管し、製販一体で投資家層の拡大および多様化に注力することとした。

こうしたなかで2014年度にスタートした中期経営計画は、「投資家ビジネス戦略」を内外主要事業におけるお客さま起点でのビジネスモデル改革の一つとして位置づけ、①投資家起点のビジネスモデルの構築、②ファイナンスアレンジ力の強化、③資産回転型ビジネスモデルの取り組みの3つを投資家ビジネス戦略における「Three Objectives」として掲げた。

当社が中期経営計画において投資家ビジネス戦略を重要な業務戦略の一つに位置づけた背景には、投資家へのアセット売却により海外での業務拡大に不可欠な外貨調達力を強化できるだけでなく、バーゼルⅢによりリスクアセットに対する制約が強まるなかで、アセットを売却・回転させていく必要性が一層高まったことがあった。また、三井住友銀行がG-CIBモデルを高度化するとともに、海外ビジネスを持続的に成長させていくためには、銀行がオリジネートした資産を投資家に販売するだけでなく、投資家ニーズを起点に案件をソーシングしていくことが必要と考えられた。

三井住友銀行は2014年7月、「投資家ビジネスクロス・ファンクショナル・チーム(CFT)」(事務局:投資銀行統括部、経営企画部)を立ち上げ、独自の投資家ビジネスのあり方(全体戦略)の明確化と、必要となるグループベースの基盤・インフラ整備について検討し、投資家ビジネス戦略の遂行を進めた。

具体的には、グローバルな機関投資家に各地域の担当者がRMとして張り付くカバレッジ体制を構築し、各地域の担当者間の連携を通じて投資家への提案力、ストラクチャリング力を強化した。また、国内の機関投資家に対するRM体制を強化。そのうえで、新規ビジネス開発ワーキンググループを組成し、投資家への販売に向けたストラクチャリング、自己投資等を推進した。さらに、既存アセットの試行的売却も実施して資産回転への取り組みを拡大した。

さらに三井住友銀行は2015年10月、国際部門、SMBC日興証券の関与を高めた新たな枠組みとして「O&D推進委員会」(委員長:頭取)を設置し、投資家ビジネスCFTを発展的に解消、海外資産回転ビジネスの強化を中心に一回り大きな枠組みの下で検討を本格化することになった。O&Dとは、Origination & Distributionの略称で、投資家への販売などの出口戦略を意識した貸出および引受業務の推進等により、資産の回転を促進することで、資産効率や資本効率の向上を図るビジネスモデルを指す。

O&Dビジネス推進のため、2016年4月にはシンジケーション営業部から投資家へのプレースメント、ストラクチャリング機能を独立させるとともに、投資銀行統括部の投資家ビジネスの企画・推進機能を合わせて「ディストリビューション営業部」を新設した。ディストリビューション営業部を国内の投資家への販売プラットフォームとすることで、シンジケートローンのみならず、海外アセットを含めた既存アセットやセカンダリー購入アセットの国内販売体制を強化した。