(2)アジア地場通貨の調達拡充

アジア地域においては、流動性危機が発生した場合でもドルとの通貨スワップによって地場通貨が調達できると認識されてきた。しかし実際には、国によって、あるいは状況によっては、危機時に地場通貨の流動性が絞られてしまい、ドルを保有していても地場通貨の安定的な調達が困難となるケースがある。2008年の世界金融危機以降、米国連邦準備制度理事会(FRB:Federal Reserve Board of Governors)は資産購入を含めた金融緩和策を取ってきたが、米国経済の回復などを背景に、2015年末から利上げを開始した。その過程で新興国からの資金の引き揚げが生じ、アジアでもインドネシアやマレーシアなどでは大幅な通貨安を経験した。1997年のアジア通貨危機の経験から、各国における危機対応は堅固になっており、当時ほど深刻な通貨危機の再来には至らなかったが、ドルのみに依存せず、調達手段拡充による地場通貨調達を強化する必要性を実感した出来事であった。

アジアは国ごとに金融規制や商慣行が異なるため、調達手段を拡充するためには各国ごとに金融市場の特性や各国特有の金融規制など詳細を調査する必要があった。アジア・大洋州トレジャリー部が創設され、こうした点を調査して調達手段の多様化を継続した。

図表8-9 アジア各国で、地場通貨を調達する手段を拡大してきた。
(図表8-9)アジア地域における三井住友銀行の調達手段拡充の例