2.バーゼルⅢの最終化をはじめとする金融規制の強化

国際金融規制に関しては、2010年12月のバーゼルⅢテキスト(最終規則文書)公表後も、マーケット・リスクほか、リスクアセットの過度なばらつきを軽減するためのリスク計測手法の見直しや資本フロアの導入(注10)等、多岐にわたる見直しが実施された。

こうしたなかで、2017年12月、バーゼル銀行監督委員会は「バーゼルⅢ:危機後の改革の最終化」と題する最終規則文書(最終化パッケージ)を公表し、世界金融危機から10年を経て、バーゼルⅢはようやく最終化された。国際金融規制の最終着地点が明確化されたことで、長年金融界を覆っていた「不確実性の霧」がようやく晴れることとなった。最終化されたバーゼルⅢは、2023年1月(わが国では2023年3月期)より各国において段階的に実施される予定となっている(注11)

図表1-5 バーゼルⅢ最終化の概要
(図表1-5)バーゼルⅢ最終化の概要

バーゼルⅢの最終化に至るこれまでのプロセスを振り返ると、一部の欧米金融機関におけるモラルハザードと公的資金による救済に対する世論の強い怒りを背景に、国際金融規制の設計がG20サミットにおけるコミットメントと指示という政治的判断に委ねられたことで、金融規制の強化が半ば自己目的化し、金融仲介活動を過剰に制約してしまう恐れがあった。そこでSMBCグループは、規制策定プロセスにおいて一般社団法人全国銀行協会や金融監督当局と連携し、規制の重複とその累積的影響を十分に検証すべきであり、意図せざる影響が生じた場合には、規制の再検討、調整を行うべきである、と主張した。バーゼルⅢの最終化に際しては、わが国金融監督当局の尽力もあり、日本の意見が反映された部分も多かった。

そのほか、マネー・ローンダリング(資金洗浄)(注12)およびテロ資金供与(注13)(以下、マネロン・テロ資金供与)対策に対する国際的な目線は、金融犯罪の国際化やテロの脅威の増加等を受けて、ますます高まった。欧米では、マネロン・テロ資金供与関連で金融機関に巨額の制裁金を課す事例が相次いだ。わが国においても、2019年10月末から11月にかけて金融活動作業部会(FATF:Financial Action Task Force)(注14)による「第4次対日相互審査」のオンサイト・レビュー(実地調査)が実施され、FATFは2021年8月、日本を「重点フォローアップ国」とする審査報告書を公表した(注15)。これを受け、日本政府は今後3年間のマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策(注16)に関する行動計画を公表している。