(2)海外証券ビジネスの立ち上げ

企業のお客さまの資金ニーズに包括的に応えるために重要な課題が銀証一体運営の推進であった。しかし、三井住友銀行は1990年代後半からの不良債権処理の局面で欧州の証券現地法人を閉鎖し、米国では証券現地法人は残っていたが、証券業務を広範に行うライセンスを持っていなかった。さらに、三井住友銀行が2009年10月に日興コーディアル証券(2011年4月に「SMBC日興証券株式会社」と改称)を100%子会社とした際には、国内リテール業務が中心であり、海外証券業務についてはほぼゼロから構築する必要があった。2009年時点では、三井住友銀行がニューヨークに証券現地法人、SMBC日興証券がニューヨークに駐在員事務所、香港およびインドネシアに出資先をそれぞれ保有していたのみであった。

2010年10月には、新たな証券業務の拠点として、三井住友銀行の連結子会社であるロンドンのデリバティブ・ハウスが従前より有していた証券業務のライセンスを活用して証券業務を開始し、英国SMBC日興キャピタル・マーケット会社へ商号を変更した。また、上海にSMBC日興の100%子会社として、SMBC日興投資コンサルティング(上海)有限公司を新設した。2010年12月、ニューヨークと香港の既存の現地法人の社名を「SMBC日興」で統一した(それぞれ、SMBC日興セキュリティーズ・アメリカ会社(注18)、SMBC日興セキュリティーズ(香港))。その後、英国SMBC日興キャピタル・マーケット会社がシドニーに拠点を開設し、2012年3月に豪州で証券業務を開始、また、2012年10月にはSMBC日興セキュリティーズ(シンガポール)が証券業務を開始した。

海外の主要な金融都市に証券業務の拠点を立ち上げる一方、人材、証券トレーディングシステムといった業務インフラに加え、引受販売のノウハウ、投資家とのリレーションシップなど、機能の拡充も不可欠だった。最初に注力したのは日本株のグローバル・オファリング(注19)ができる態勢の整備だった。海外拠点のうち、ロンドンの英国SMBC日興キャピタル・マーケット会社が引受機能を有していたことから、ロンドンを中心に日本株の引受機能を整備し、ニューヨーク、香港、シンガポールなどでは、非日系投資家に対する販売機能を強化した。日本株についてグローバル・オファリングの態勢が整備されると、次は日本企業が発行するグローバル債券についても同様の態勢を進めた。

非日系投資家に新規に口座を開設してもらうなど、ゼロからスタートした地道な営業活動が実り、態勢が整うとともに引受実績も増え、SMBC日興証券は2013年、株式引受のグローバル・オファリングで同社初の主幹事を獲得。さらに、トムソン・ロイター(現REFINITIV)の「IFR(International Financial Review)」において「Yen Bond House of the Year 2013」を受賞した。