(2)マルチフランチャイズ戦略の加速
マルチフランチャイズ戦略については、出資先の拡大やグループ各社間の協働のさらなる進化を通じて、マルチフランチャイズ・バリューのさらなる向上を目指した(注23)。
マルチフランチャイズ戦略の最初の対象国となったインドネシアにおいては、インドネシア三井住友銀行の業容拡大を図りつつ、Bank Tabungan Pensiunan Nasional(BTPN)とインドネシア三井住友銀行との合併を進めることとした(注24)。2019年1月30日、三井住友銀行が40%出資していたBTPNの株式を追加取得(注25)して連結子会社化したうえで、2019年2月1日、BTPNとインドネシア三井住友銀行が合併して、フルラインの商業銀行「PT Bank BTPN Tbk」が誕生した(三井住友銀行出資比率97.3%(合併当時)、2019年8月に一部売却し、同92.43%)。新銀行のロゴには新たにSMBCグループロゴを追加してグループ企業であることを明示した。
本合併の狙いは、第一に、インドネシア準大手銀行に位置する業容と資本ベースを確保すること、第二に、ホールセールビジネスとリテールビジネスをフルラインで展開するプラットフォームを構築すること、第三に、SMBCグループとしてシナジーを最大化すること、の3点であった。第一の狙いについては、合併により総資産は1兆3,000億円(2021年3月末)を超え、インドネシアで8番目の規模に拡大した。合併前のBTPNが、個人消費者・個人事業者をお客さまの主たる基盤とし、富裕層からマス・マーケットまで各層のニーズに応じて、決済、クレジットカード、住宅・消費者ローンなどの金融商品・サービスを提供してきたのに対し、インドネシア三井住友銀行は主として法人企業をお客さま基盤としていた。その両社が合併したことで、Bank BTPNはフルラインの金融事業基盤を整えるとともに、たとえば、企業の従業員に対してクレジットカードや自動車ローンを提供するといったシナジーの獲得が見込めるようになり、合併の第二、第三の狙いも達成できた。

当社は2019年4月、国際業務開発部を発展的に解消してアジア事業戦略部(注26)を新設し、アジアの新たなマルチフランチャイズ国における事業計画の策定・実行の検討、アジアリテール分野におけるデジタルバンキングやコンシューマーファイナンスなどのローカルビジネスの検討を進めた。2020 年度からスタートした中期経営計画においても、「アジアのフランチャイズ拡大とデジタル金融強化」を掲げ、以前から取り組んできたインドネシアにおける事業基盤強化に加えて、他のアジア諸国へのフランチャイズ拡大について具体的に検討を進めた。その結果として、2021年度に入り、ベトナム、フィリピン、インドにおける地場金融機関への出資を相次いで公表した。
SMBCコンシューマーファイナンスは2021年10月、ベトナム民間商業銀行である Vietnam Prosperity Joint Stock Commercial Bank(VP Bank)傘下のコンシューマーファイナンス最大手VPBank Finance Company Limited(以下、FE Credit)の49%の株式を取得した(出資発表は2021年4月)。FE Creditは、市場シェア約 50%を占める全国的なネットワークと先進的なモバイルアプリを活かして、個人消費者向けに無担保ローンやクレジットカードなど幅広いサービスを提供している。本出資に伴い、FE Creditは当社の持分法適用会社となる。ベトナムには2008年に三井住友銀行が出資したVietnam Eximbankもあり、SMBCグループは、培ってきた金融ノウハウを活かしながら、リテールとホールセールの双方へ事業基盤を拡大していく方針である。
また、三井住友銀行は2021年6月、フィリピンの商業銀行Rizal Commercial Banking Corporation(RCBC)との間で、同社普通株式 4.99%(総額約100 億円)の取得につき合意し、株式取得に関わる契約を締結したことを公表した。RCBCは1960 年に設立されたフィリピンの地場主要銀行(注27)で、デジタルバンキングサービスやESG分野に強みがある。三井住友銀行は、業務ノウハウの提供等により同行の事業強化・成長の促進を見込むとともに、同行との連携を通じてフィリピンでの事業拡大・プレゼンス向上を図ることとしている。
さらに当社は2021年11月、シンガポール政府の投資会社 Temasekの100%出資投資子会社であるFullerton Financial Holdings Pte. Ltd.(FFH)から、インドにおけるFFHの100%出資先ノンバンクFullerton India Credit Company Limited(Fullerton India)の持分74.9%を取得した(出資発表は2021年7月)。Fullerton Indiaは、インド全域に650店超の拠点網を保持し、主に中小企業・営業性個人、個人中間層向けに無担保ローンや不動産担保ローンを提供するノンバンクである。インドのリテール・SME(中堅中小企業)セクターの長期的な成長性を展望して、当社とFullerton Indiaの強みを活かしたシナジー創出により、バリューアップを図る方針である。

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第1章不確実性が増す外部環境
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第2章新たなガバナンスの下でのグループ・グローバル経営の強化
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第3章「カラを、破ろう。」
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第4章「お客さま本位の業務運営」の徹底
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第5章リテール金融ビジネスにおけるビジネスモデルの変革
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第6章ホールセールビジネスにおける真のソリューションプロバイダーを目指して
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第7章グローバル・プレーヤーとしての進化
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第8章高まる不透明感の下での市場ビジネスの進化
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第9章アセットマネジメントビジネスの強化
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第10章デジタル戦略の本格展開
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第11章G-SIBsとしての内部管理態勢の確立
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第12章業務インフラの高度化
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第13章グループ経営を支える人事戦略
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第14章持続可能な社会の実現に向けた取り組み
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第15章「コロナ危機」への対応
- おわりに