第10章
デジタル戦略の本格展開

1.デジタル革命への対応

(1)IT・ネットビジネス戦略の検討

2010年代に入り、スマートフォンが爆発的に普及すると、SNS(Social Networking Service)のユーザーが世界的に増加するとともに、Eコマース(電子商取引)市場が大幅な拡大を遂げた。さらに、AI(Artificial Intelligence)が進化するなか、ネットワークから得られる多様かつ膨大な情報(ビッグデータ)の活用に関心が集まった。

ITを活用したネットビジネスの隆盛は、産業構造や社会のあり方を一変させつつあり、それは既存ビジネスにとっては脅威である一方、ITやネットの活用次第ではSMBCグループの金融サービスの利便性や効率性を飛躍的に高めることができるほか、異業種のプレーヤーとオープンに連携することで、利便性の高い新たなデジタル・ソリューションをお客さまに提供することが可能になると考えられた。

そこで三井住友銀行は2012年7月、「成長戦略プロジェクト」の一つとして「IT・ネット化戦略タスクフォース」(事務局:決済企画部)を設置して、技術進化への対応と金融モデルの構築、グループとしての中長期的な対応等についていち早く検討を行った。その後、「IT・ネット化戦略プロジェクト・チーム」において、国内外の先進技術やIT・ネットを活用した新ビジネスを調査・集約するとともに、SMBCグループとしての新たなビジネスモデルの創出を検討した。

2014年7月には、「IT・ネットビジネス戦略クロス・ファンクショナル・チーム」(事務局:決済企画部)を立ち上げ、顧客ニーズ調査や戦略立案に向けた体系的アプローチやフレームワークの構築にとどまらず、IT・ネット関連の新規ビジネスの事業化に向けた取り組みを加速させた。同時に、積極的にデジタル人材の中途採用を行うなど、事業化に必要なリソースの確保を進めた。そうした過程で生まれたのが、日本電気(NEC)との共同出資で設立された「株式会社ブリースコーポレーション」が提供するコンビニ収納サービス「PAYSLE(ペイスル)」(注1)であった。