(2)三井住友DSアセットマネジメントの誕生

2018年5月、大和証券グループ本社、三井住友海上火災保険、住友生命保険および当社の4社間で、三井住友アセットマネジメントと大和住銀投信投資顧問の合併に関する基本合意書を締結した。SMBCグループは、中期経営計画(2017~2019年度)において、アセットマネジメント事業を「7つの戦略事業領域」の一つとして位置づけ、その強化を図る方針を打ち出していた。アセットマネジメントビジネスは基本的に規模の利益が働くビジネス領域である。したがって、規模拡大により収益性を引き上げつつ、運用手法の高度化を図る必要があったが、三井住友アセットマネジメント、大和住銀投信投資顧問ともに国内資産運用残高ランキングで10位台前半にとどまり、規模の拡大によるスケールメリットの獲得が大きな課題となっていた。そこで、合併を通じて両社の強み・ノウハウを結集し、フィデューシャリー・デューティーに基づく最高品質の運用パフォーマンスとサービスを提供する、お客さま第一主義の資産運用会社を実現することを目指すこととした。

基本合意後、両社は統合準備委員会を設置し、各テーマ別に分科会を組成し、統合準備を本格化させた。2019年4月、三井住友アセットマネジメント(出資比率:当社60%、三井住友海上火災保険20%、住友生命保険20%)と大和住銀投信投資顧問(同:当社44%、大和証券グループ本社44%、T・ロウ・プライス10%、三井住友信託銀行2%)が合併(注6)、「三井住友DSアセットマネジメント株式会社」が誕生した(同:当社50.1%、大和証券グループ本社23.5%、三井住友海上火災保険15.0%、住友生命保険10.4%、三井住友信託銀行1.0%)。合併により、新会社としての運用資産残高は拡大。公募投資信託残高(除くETF)にて業界6位の運用会社が誕生した(図表9-1)。

図表9-1 三井住友アセットマネジメントと大和住銀投信投資顧問の合併により、運用資産残高で業界6位の運用会社が誕生。
(図表9-1)公募投資信託残高ランキング(除くETF、2019年3月末時点)

三井住友DSアセットマネジメントは発足を契機に、経営理念として目指すべき姿(ミッション&ビジョン)を次のように定め、全ての役職員が一丸となり、マクロ経済や技術革新などの変化に素早く対応し、お客さまをはじめとする全てのステークホルダーのQuality of Lifeの向上に貢献していく方針を対外的に打ち出した。

三井住友DSアセットマネジメントの目指すべき姿(ミッション&ビジョン)
三井住友DSアセットマネジメントの目指すべき姿(ミッション&ビジョン)

三井住友DSアセットマネジメント社長に就任した松下隆史は、対外的に次のようなメッセージを発出した。

新会社は、両社それぞれの強み・ノウハウを融合させ、フィデューシャリーに基づく最高品質の運用パフォーマンスとサービスを提供することにより、「Quality of Lifeに貢献する最高の資産運用会社」を目指すことを経営理念に掲げました。(中略)資産運用業界を見渡すと、技術革新や新たなプレーヤーの台頭など、近年の変化には目を見張るものがあります。こうした変化にいち早く対応するにとどまらず、自らが変化をつくりだす存在となれるよう、社員一同が鋭意努力してまいります。

その1年後の2020年4月、松下が社長を退任して取締役会長に就任するとともに、副社長執行役員の猿田隆が社長に就任した。猿田は信託銀行出身で、大手運用会社で国内外のマネジメントも経験、2019年10月に三井住友DSアセットマネジメントに加わった。運用ビジネスに通じた外部出身者ということもあり、一部メディアで注目されたが、猿田の社長就任により、三井住友DSアセットマネジメントの経営の独立性を一層高めてフィデューシャリー・デューティーに基づく業務運営を徹底する狙いがあった。