(3)金融円滑化法への対応

世界金融危機を受けてわが国の中小企業等が厳しい資金繰りに直面するなか、政府は借り手に緊急的な支援措置を講じることを政策課題に掲げた。そうした政策の一環として金融円滑化法(注13)が2009年11月に成立し、同年12月に施行された。金融円滑化法は、金融機関の努力義務として、①中小企業に対する信用供与をその特性および事業の状況を勘案しつつ、できる限り柔軟に行うこと、および②中小企業等の借り手から債務の弁済に関わる負担の軽減の申込みがあった場合は、できる限り弁済負担の軽減に資する措置を取ることなどを求めるとともに、中小企業等の借り手から弁済負担軽減の申し込みがあった場合等における対応方針の策定や体制整備、説明書類の公衆縦覧、対応措置等の行政庁への報告などを金融機関に義務づけるものであった。

三井住友銀行は2009年12月、金融円滑化法の施行に合わせ、「貸付条件の変更等に係る対応の基本方針」を制定・公表するとともに、金融円滑化に関わる体制整備等を実施した。具体的には、個人統括部および法人企業統括部に金融円滑化推進室を設置し、金融円滑化に関する企画立案・管理、諸計数の集計・管理、営業店指導等を行うこととした。また、金融円滑化に関する行内横断的な課題への対応を協議するため、個人部門、法人部門の各統括責任役員やリスク管理部門担当役員および関連部の各部長からなる「金融円滑化協議会」を設置した。また、本部に返済条件変更等に関わる「金融円滑化苦情相談デスク」を設置した。2010年1月には、金融円滑化の達成を通じ、適切なリスク管理の下、適切かつ積極的にリスクテイクを行い、金融仲介機能を積極的に発揮することを目的として、金融円滑化の管理に関わる基本事項を定めた「金融円滑化管理規程」を重要規程として制定した。

そのうえで、三井住友銀行は真摯かつ丁寧なお客さま対応および適切かつ積極的な金融仲介機能に努めるとともに、お客さまが抱える経営課題に目を向け、それぞれの経営課題やライフステージに応じた最適な解決策をお客さまの立場に立って提案し、十分な時間をかけて実行支援するなど、コンサルティング機能の一層の発揮に努めた。具体的には、外部専門家や中小企業再生支援協議会等との円滑かつ適切な連携に努めるとともに、資本性借入金や動産・売掛債権担保融資等の多様な金融手法も活用しながら、中小企業の経営改善や事業再生を継続的に支援した。

金融円滑化法は、中小企業の業況や資金繰りの状況などを理由に、当初の期限(2011年3月末)を越えて延長され、最終的に2013年3月末をもって終了した。しかし、三井住友銀行は、法期限到来後も金融円滑化に関わる対応方針は変更せず、金融円滑化に関わる方針等を定めた「金融円滑化管理規程」等を一部改定して金融円滑化が一時的な対応ではなく、恒久的対応であることを明確化した。対外的にも、2013年4月に「金融円滑化に関する基本方針」を公表し、中小企業および個人のお客さまからの新規融資や貸付条件変更などの申込みに対する対応方針を明示した。貸付条件変更などの申込みに対する取り組み状況も継続的に開示している。