(3)ビジネスモデル改革の推進と外部環境の悪化

2014~2016年度の中期経営計画期間中、三井住友銀行はクロス・ファンクショナル・チームの設置などを通じてビジネスモデル改革を着実に進めた。具体的には、国内では2014年4月に、2001年4月の合併以来初めてとなる大規模な拠点再編・営業体制の見直しを伴う「国内業務改革」(注18)に踏み切り、その定着を図った。また、2014年7月より三井住友銀行およびSMBC日興証券において、個人のお客さま向けに「銀証リテール一体化モデル」を全店展開した(注19)。海外においては、新興国経済の急減速を受け、アジアにおけるマルチフランチャイズ戦略は、一時スローダウンを余儀なくされたものの、欧米非日系コア企業との取引複合化の進展や米国ゼネラル・エレクトリック(GE)の欧州LBO(Leveraged Buyout)ビジネスの買収等を通じ、事業基盤の強化を進めた。

また、グループ戦略の強化に向けて、2015年11月には、SMBC信託銀行がシティバンク銀行のリテールバンク事業の統合を完了(注20)したほか、2016年5月には、証券事業のさらなる強化を目指し、2018年1月を目途とするSMBC日興証券とSMBCフレンド証券の合併を公表した。さらに、2016年7月、三井住友銀行が三井住友アセットマネジメントの出資比率を40%から60%に引き上げて連結子会社化し、2016年10月には当社の直接出資子会社とした。

当社グループのビジネスがグローバルに広がるなか、当社はこれまで以上にコーポレートガバナンスの充実やリスク管理の高度化、国内外の法規制への対応の強化、グローバル人材の育成、ダイバーシティの推進など、ビジネスの成長を支える企業基盤の強化に努めた。

コーポレートガバナンスに関しては、当社は2015年5月、「SMFGコーポレートガバナンス・ガイドライン」を策定・公表し、コーポレートガバナンスの強化・充実を経営上の最優先課題の一つと位置づけた。2015年6月には、グローバル金融グループとしてダイバーシティを確保しつつ、より多くの「社外の視点」を経営に取り入れる観点から、これまで取締役3名、監査役3名の計6名だった当社社外役員を、取締役5名、監査役3名の計8名に増員した。また、当社社外役員は、これまで三井住友銀行の社外役員も兼務していたが、この兼務体制を解消することとした。取締役会の運営も見直し、十分な審議時間の確保に努めるとともに、重要な経営戦略については掘り下げて議論するなどの工夫を行った。さらに、2016年6月には、当社の取締役にSMBC日興証券会長を加えてグループガバナンスを強化したほか、「取締役会の実効性評価」(注21)を導入してPDCAサイクルを回し、取締役会の運営を継続的に見直した。

この間、当社連結ベースの業績は、中期経営計画初年度こそ順調に滑り出したものの、2年目の2015年度は、連結業務純益が前年比1,675億円の減益、連結当期純利益が前年比1,069億円の減益となるなど、大変厳しい決算となった。これは、アジア新興国経済の減速と2016年2月のマイナス金利政策の導入により、三井住友銀行の国内業務部門やSMBC日興証券の2015年度下期のトップライン収益が伸び悩んだことに加えて、BTPNの株価下落によるのれんの減損や、SMBCコンシューマーファイナンスにおける利息返還損失引当金の追加繰り入れの発生、ビジネスモデル改革に向けた先行投資による経費の高止まりなどの要因を受けたものであった。

そこで当社は、2015年度半ばから中期経営計画の見直しを実施し、トップライン収益重視からボトムライン収益重視に方針を転換、経費についてもグループベースの経費削減協議会を設置するなどして、グループベースで経費コントロールを強化した。最終的に、中期経営計画で設定した財務目標のうち、普通株式等Tier1比率については2017年3月末時点で10.0%(除く有価証券評価差額金)と目標を達成したものの、ROEや連結粗利益成長率、経費率の目標はいずれも未達に終わった。

図表2-6 2014~16年度中期経営計画の財務目標と実績
(図表2-6)2014~2016年度中期経営計画の財務目標と実績