6.海外ビジネスを支える経営基盤の強化

当社グループの海外ビジネスが大きく拡大するなかで、それを支える経営基盤の強化も必要となった。三井住友銀行は、内部管理態勢の強化、安定的な外貨調達基盤の強化、グローバル人材の育成、ならびにシステムインフラの整備などを並行して進めた。

(1)内部管理態勢の強化

海外ビジネス拡大とともに、内部管理態勢の強化が課題の一つとして浮上した。グローバル化のなかでマネー・ローンダリングやテロ資金供与のように、金融機関が関わる可能性のある犯罪への対策が求められるようになったほか、2008年の世界金融危機発生後は、欧米を中心に金融規制が厳格化した。英国は世界金融危機を契機に、金融機関の自主的な規律を重んじるアプローチから、規制監督を強化する方針へ大きく方向転換し、三井住友銀行の英国現地法人である欧州三井住友銀行は他の海外拠点よりも早く、2012年から対応に取り組むことになった。ガバナンス、リスク管理、ならびにマネー・ローンダリング対策をはじめとするコンプライアンス態勢の強化に向けて、役職員への研修の強化、欧州法務・コンプライアンス室の新設と人員増員、リスク管理部長の役割見直しなど、抜本的に体制を再構築した。後に、他の海外拠点のガバナンス・リスク管理態勢を高度化する際に参考とされた。

与信管理については、インオーガニックによる業容拡大に際して、管理態勢の強化も随時行った。具体的には、航空機リース事業の拡大に合わせた体制整備として、2014年4月に欧州審査部航空機審査室(2016年4月よりアセットファイナンス審査室に改称)を設置したほか、国内外のLBOファイナンス案件への取り組みに対しては、従前から定めていたMBO/LBOファイナンスに関する与信管理ルールを2014年、2017年に改定してリスク管理を強化した。また、実務面では、投融資企画部・国際統括部・システム統括部共同でグローバル与信管理態勢改善プロジェクトチーム(GBR-PT)を立ち上げて、業務プロセス、システム、規程・手続きなどが一体となった業務変革を進め、2015年11月には新グローバル与信管理システム「GBR」を導入した(注36)

アジア地域においても、業容の拡大を受けて、先行して進めてきた欧米に倣う形で態勢整備を実施した。すなわち、2014年4月にリスク管理強化のために「アジア・大洋州リスク管理部」、2015年4月に「アジア・大洋州審査部」および「国際与信管理部東アジア審査室」(2017年4月より「東アジア審査部」)を設置した。また、豪亜地域におけるマネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策として、本人確認手続システム「e-KYC」を導入するとともに(2012年開始、2016年全拠点完了)、2015年4月にはマネロン・テロ資金供与対策をはじめとする地域横断的なコンプライアンス強化のために「アジア・大洋州法務コンプライアンス室」を設置した。