TCFD提言への対応
当社は2017年12月、パリで開催された気候変動サミット(One Planet Summit)において、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の最終報告書(TCFD提言)への賛同を表明した。2019年4月には、TCFDが提言する4つの開示基礎項目「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」ごとに、気候変動に対する当社の考え方を開示した(注16)。同時に、「物理的リスク」に関するシナリオ分析結果と算定プロセスをグローバル金融機関として世界で初めて開示した。具体的には、気候変動に伴う洪水や風水害等の水災の増加により、三井住友銀行のお客さまである事業法人における、①担保価値の毀損、および②財務状況の悪化に伴う債務者区分の劣化という2つの経路から発生が見込まれる与信関係費用を試算した。
2020年1月には、「移行リスク」に関するシナリオ分析結果を開示した。移行リスクとは、脱炭素社会への移行により、ビジネスモデルの変革等を通して、当社グループのお客さまのビジネスに影響が及び、その結果として、当社の資産価値が将来的に毀損するリスクを指す。
2021年度には、物理的リスクにおいて事業法人の分析対象地域を国内からグローバルに拡大するとともに、移行リスクについては2050年カーボンニュートラル実現を想定し、産業革命以来2100年時点での気温上昇を1.5℃未満とするシナリオ(1.5℃シナリオ)への見直しを行った、その結果、物理的リスクとして想定される与信関係費用は、2050年までに累計550~650億円(国内300~400億円)となり、気候変動に起因する水災が三井住友銀行の単年度財務に与える影響は限定的と考えられた。2℃シナリオの下では、公表政策シナリオ対比、2050年までの単年度で20~100億円程度、与信関係費用が増加すると見込まれた(注17)。移行リスクについても、1.5℃シナリオの下では、Current Policiesシナリオと比べ、2050年までの単年度で20~240億円程度の与信関係費用の増加が見込まれる試算結果となった。

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第1章不確実性が増す外部環境
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第2章新たなガバナンスの下でのグループ・グローバル経営の強化
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第3章「カラを、破ろう。」
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第4章「お客さま本位の業務運営」の徹底
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第5章リテール金融ビジネスにおけるビジネスモデルの変革
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第6章ホールセールビジネスにおける真のソリューションプロバイダーを目指して
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第7章グローバル・プレーヤーとしての進化
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第8章高まる不透明感の下での市場ビジネスの進化
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第9章アセットマネジメントビジネスの強化
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第10章デジタル戦略の本格展開
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第11章G-SIBsとしての内部管理態勢の確立
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第12章業務インフラの高度化
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第13章グループ経営を支える人事戦略
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第14章持続可能な社会の実現に向けた取り組み
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第15章「コロナ危機」への対応
- おわりに