(4)情報銀行に関する取り組み

三井住友銀行と日本総合研究所は、「金融機関として培ってきた社会的信用を活かし、パーソナルデータを安心・安全に預かり、運用する機能を提供することが、これからの金融機関に求められる新たな社会的使命の一つとなり得る」との考えの下、2019年3月、大阪大学医学部附属病院と連携し、「医療データの情報銀行」の実証事業をスタートさせた(注19)。情報銀行とは、「個人との契約に基づき、個人のためにパーソナルデータを管理するとともに、個人の意思に基づきデータ利活用を行う事業」を指す。医療データは、パーソナルデータの中でも、個人にとって最も価値のあるデータであると同時に、センシティブで預ける相手を選ぶデータでもある。それだけに、SMBCグループの社会的信用や、お客さまの個人情報を厳格に管理してきた経験・ノウハウが最も活きる分野と考えられた。

本実証事業においては、大阪大学医学部附属病院の産婦人科に通院している妊婦さんを対象に参加者を募集し、健診データや出産時の情報を三井住友銀行が保管・蓄積し、個人のスマートフォンで閲覧できるようにした。その結果、医療データ等のパーソナルデータを情報銀行で自己管理したいというニーズが確実に存在することがわかった。

図表10-4 妊婦さんの健診データや出産時の情報を三井住友銀行が保管・蓄積し、個人のスマートフォンで閲覧できるサービスを実証事業として実施
(図表10-4)大阪大学医学部附属病院における「医療データの情報銀行」実証事業

そこで当社は2020年9月、「医療データの情報銀行」の本格事業化に向けて、「株式会社プラスメディ」(2016年12月設立)に出資し連結子会社とした(当社出資比率92.9%)(注20)。プラスメディが提供するスマートフォンアプリ「MyHospital」(マイホスピタル)は、「Myカルテ」や「Myおくすり」といった自分の健康・医療データを管理するサービスに加え、診察代をカード決済することで会計時の待ち時間を短縮する後払い会計機能や処方箋を事前に薬局にFAX送信する機能等、病院や薬局における滞在時間の短縮につながる通院・受診支援サービスを提供しており、病院の混雑緩和や業務効率化にも貢献するものとなっている。

当社はこれまでに多くのデジタル子会社を設立・運営してきたが、創業間もない非金融のベンチャー企業を連結子会社としてSMBCグループに迎え入れたことはなかった。しかし、デジタル革命の進展が社会・経済を大きく変容させつつあるなか、ビジョンや価値観を共有できるベンチャーと積極的に協働して、従来の金融の領域にとどまらない新事業を創出していく必要があった。当社によるプラスメディへの出資は、そうした変革の第一歩と位置づけられた。

図表10-5 自分の健康・医療データを管理するサービスに加え、診察代をカード決済することで会計時の待ち時間を短縮する後払い会計機能や処方箋を事前に薬局にFAX送信する機能等を提供
(図表10-5)プラスメディのスマートフォンアプリ「MyHospital」