6.リース事業の再編と新たな挑戦

(1)住友商事との共同リース事業の再編

2007年10月の住商リースと三井住友銀リースの合併による三井住友ファイナンス&リースの誕生以来、当社と住友商事は共同で総合リース事業、オートリース事業を営むとともに、航空機リース事業への参入も果たしてきた。そして両社は2017年11月、三井住友ファイナンス&リースを中核にリース事業を再編することを発表した。

再編の具体的内容としては、まず、当社と住友商事が三井住友ファイナンス&リースを戦略的リース共同事業のプラットフォームとし、当社60%、住友商事40%であった三井住友ファイナンス&リースに対する出資比率をそれぞれ50%とし、当社の連結子会社から双方の持分法適用会社にすることを公表した。

当社の出資比率引き下げの背景には、次のような狙いがあった。

第一は自己資本規制上のメリットである。三井住友ファイナンス&リースはこれまで当社の連結子会社として自己資本規制上、三井住友ファイナンス&リースのリスクアセットの100%が当社の連結リスクアセットに含まれていた。出資比率の引き下げにより持分法適用会社となることで、当社の連結リスクアセットの削減に伴う普通株式等Tier1比率の上昇が見込まれた。同時に、三井住友ファイナンス&リースがバーゼルⅢベースの厳格な自己資本規制の適用対象外となることでリスクアセットの制約から解放され、スケールメリットを追求できるメリットもあった。

第二は、業務範囲規制上のメリットである。三井住友ファイナンス&リースはこれまで当社の連結子会社として銀行法上の業務範囲規制が適用されていた。しかし、三井住友ファイナンス&リースが当社の持分法適用会社となり、かつその子法人等の経営に当社が関与しない旨の契約を締結すれば、当該法人を通じて銀行法上の業務範囲規制の対象外の業務にも従事できるというメリットがあった(注63)

第三に、三井住友ファイナンス&リースを当社と住友商事の対等出資会社とすることで、住友商事との事業協力体制をより一層深化させ、環境・インフラ、ヘルスケア等の今後成長が見込まれる分野への事業展開や、アセットベースの金融事業の拡大、商流ビジネスの強化を企図したバリューチェーンの構築等、新たなビジネス領域への本格展開を図っていくことが期待された。

当社の出資比率の引き下げと同時に、三井住友ファイナンス&リースはSMBC Aviation Capitalへの出資比率を引き上げるとともに、住友三井オートサービスに資本参加することを公表した。これは各社との連携を強化し、クロスセルの推進や、経営基盤の共有化を通じた、新たなシナジーの追求を推進することを狙いとした。

さらに、三井住友ファイナンス&リースが2016年4月に買収し100%子会社とした日本GEのリース事業部門であったSMFLキャピタルを吸収合併することも公表した。これは、SMFLキャピタルの顧客基盤、人的資源を取り込み、国内営業の付加価値向上を狙いとしていた。SMFLキャピタルのフリート事業(オートリース事業)については、住友三井オートサービス傘下とし、同事業の国内シェアNo.1を盤石なものとし、総合モビリティサービス事業(注64)の展開を強化することとした。

上記のようなリース事業の再編に併せ、航空機リース事業の中長期的な競争力を向上させ、持続的な成長と発展を確固たるものとするため、アイルランド・ダブリン本社のSMBC Aviation Capitalが三井住友ファイナンス&リースおよび三井住友銀行を引受先とする10億米ドルの資本増強を行った。

2017年11月の基本合意以降、当社、住友商事、三井住友ファイナンス&リース合同で共同リース事業再編委員会を設置し、最終合意に向けて詳細な検討を進めた。その結果、3社は2018年3月、概ね基本合意に基づいた内容で合弁事業契約書等を締結し、その後、各国競争法の許認可(注65)も取得した。そうしたなか、事業再編は2段階に分けて実施された。

第一段階は2018年11月。三井住友ファイナンス&リースに対する当社出資比率の変更である。当社と住友商事は、同社の自己株式取得により出資比率をそれぞれ50%とした。これにより三井住友ファイナンス&リースは、当社の連結子会社から持分法適用会社となった。同時にSMBC Aviation Capitalは、三井住友ファイナンス&リースおよび三井住友銀行を割当先として7億米ドルの増資および三井住友銀行から3億米ドルの劣後ローンによる調達を実施した。増資後の出資比率は三井住友ファイナンス&リース68%、三井住友銀行32%となった。

第二段階は2019年1月。三井住友ファイナンス&リースによるSMFLキャピタルとの統合と住友三井オートサービスによるSMFLキャピタルのフリート事業(オートリース事業)の子会社化を実施した(注66)。同時に、住友三井オートサービスは三井住友ファイナンス&リースの資本参加を受け、その持分法適用会社となった。これにより、長期に及んだ共同リース事業の再編は全て完了することとなった。

図表6-10 当社と住友商事が三井住友ファイナンス&リースを戦略的リース共同事業のプラットフォームとし当社60%、住友商事40%であった三井住友ファイナンス&リースに対する出資比率をそれぞれ50%とし、当社の連結子会社から双方の持分法適用会社になったことが再編後のポイント
(図表6-10a)再編前・再編後の出資構成
<再編前の出資構成>
図表6-10 当社と住友商事が三井住友ファイナンス&リースを戦略的リース共同事業のプラットフォームとし当社60%、住友商事40%であった三井住友ファイナンス&リースに対する出資比率をそれぞれ50%とし、当社の連結子会社から双方の持分法適用会社になったことが再編後のポイント
(図表6-10b)再編前・再編後の出資構成
<再編後の出資構成>