2.三井住友銀行における人事制度の改定
(1)制度改定の背景
「キャリアアップの道筋が見えない」。三井住友銀行が人事制度を広範囲に見直すこととなった直接的なきっかけは、BC職(注1)従業員の切実な「声」であった。さらに、グローバル化の進展やテクノロジーの急速な進化、わが国における少子高齢化と従業員の価値観やライフスタイルの多様化が進むなか、三井住友銀行が10年20年先の業界の枠を越えたグローバルな競争に打ち勝つためには、①多様な人材を確保・育成するとともに、②職務やスキルに応じた柔軟な人事制度の構築・運用、③従業員の自律的なキャリア形成支援と成長機会の提供が不可欠、と考えられた。
こうした問題意識の下、三井住友銀行は2018年6月、人事部内に「制度改定プロジェクトチーム」を立ち上げ、人事制度の見直しに着手した。前述の環境変化を踏まえ、職種だけでなく、階層やシニアの処遇のあり方等についても幅広く検討し、最終的にはほぼ全従業員に影響が及ぶ、広範囲の制度改定となった。制度改定に際しては、その意義や内容を説明するビデオや『人事制度改定ガイド』を制作し、部店単位の勉強会に加えて人事部による従業員向け説明会を100回以上開催するなどして従業員の理解を求めた。従業員組合との半年以上にわたる交渉の末、2019年10月に妥結、2020年1月1日からの適用開始に漕ぎ着けた。
人事制度改定にあたり、「職種、階層、年齢などに関係なく、従業員一人ひとりが新しいチャレンジに果敢に挑んでいく」「そうしたチャレンジを通じ一人ひとりがより活き活きと働き、自らの付加価値を高め、思う存分活躍できる」、そのような環境をつくりたいという想いを込めて「Be a Challenger」というスローガンを掲げた。そのうえで、「Fair」(公平な人事制度)、「Challenge」(新たな挑戦を促進する人事制度)、「Chance」(能力を最大限発揮する機会がある人事制度)の3つを基本コンセプトとした。
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第1章不確実性が増す外部環境
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第2章新たなガバナンスの下でのグループ・グローバル経営の強化
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第3章「カラを、破ろう。」
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第4章「お客さま本位の業務運営」の徹底
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第5章リテール金融ビジネスにおけるビジネスモデルの変革
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第6章ホールセールビジネスにおける真のソリューションプロバイダーを目指して
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第7章グローバル・プレーヤーとしての進化
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第8章高まる不透明感の下での市場ビジネスの進化
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第9章アセットマネジメントビジネスの強化
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第10章デジタル戦略の本格展開
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第11章G-SIBsとしての内部管理態勢の確立
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第12章業務インフラの高度化
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第13章グループ経営を支える人事戦略
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第14章持続可能な社会の実現に向けた取り組み
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第15章「コロナ危機」への対応
- おわりに