3.アジア地域での取り組み
(1)地域横断的な組織体制の構築
当社が「アジア・セントリック」の掛け声の下でアジアにおけるビジネス強化に乗り出すなかで、その業務方針に沿った組織改定の一つとして、三井住友銀行は、2015年4月、市場営業部門にアジア・大洋州トレジャリー部を創設した。アジア・大洋州地域におけるALM(Asset Liability Management)の高度化および為替取引の強化によるビジネス推進支援、の2点が同部設置の目的だった。市場営業部門は従前よりシンガポールに駐在員を置いており、そのシンガポール拠点がアジア・大洋州拠点全体の市場関連業務を所管する組織へ発展的に組織改定されて、アジア・大洋州トレジャリー部となった。人員もシンガポールに加え、他の一部の国にもアジア・大洋州トレジャリー部所属の駐在員が配置された(注19)。
アジアビジネスの拡充で資金取扱量が増加したほか、現地規制も強化される方向にあり、支店における資金繰り運営には、より高度な専門知識やスキルが必要となっていた。アジア・大洋州トレジャリー部の設置後は、同部がアジア・大洋州地域の各拠点の資金繰り運営へのアドバイス、ならびに規制対応サポートを行うようになった。2019年のインドネシアにおけるBTPNと三井住友銀行の現地法人であるインドネシア三井住友銀行との合併(合併後、現Bank BTPN)に際しても、現地へ専従スタッフを派遣し、資金繰り運営の円滑な統合を支援した。
アジア・大洋州トレジャリー部創設のもう一つの柱である為替取引強化に関しては、アジア・大洋州トレジャリー部が主体となり、国際部門の各拠点営業部員と協働して、為替取引の拡大に注力した。アジア域内で拠点網を広げる企業やクロスボーダー取引を行う企業は増加傾向にあり、外貨預金やキャッシュマネジメントのほか、現地規制・税制に関する情報などに対するニーズも強かった。アジア・大洋州トレジャリー部が地域のALM運営や為替セールスを一元的に管理することによって得た知見を国際部門とも共有しながら、現地の営業をサポートした。
三井住友銀行(中国)、香港支店、台北支店、ソウル支店といった東アジアの拠点においては、アジア・大洋州トレジャリー部が設立された当時、地域横断的にトレジャリー業務を担当する組織はなく、三井住友銀行(中国)と香港拠点は独立して運営されていたほか、台北支店やソウル支店のトレジャリー業務に対する地域本部からのサポート体制も十分には確立されていなかった。このため、先行して実績を挙げていたアジア・大洋州トレジャリー部の知見を活かして東アジア地域にも類似の体制を展開することとなり、2019年、東アジア地域におけるALMならびに為替・デリバティブセールスの強化を目的として、市場営業部門の香港駐在を発展的に組織改定して東アジアトレジャリー部を香港に新設した(注20)。
台北支店およびソウル支店のトレジャリー課が東アジアトレジャリー部を兼務、また、三井住友銀行(中国)トレジャリー部へ東アジアトレジャリー部から派遣職員を配置することで域内における一体運営を図った。アジア・大洋州トレジャリー部設立の際と同様に、東アジアトレジャリー部が設置されたことで、従来は支店単体では経験や人材の不足から困難だったデリバティブなど高度な金融商品の提供が同部の知見を活かして東アジア地域の他の拠点でも可能となった。
また、アジア・大洋州トレジャリー部と東アジアトレジャリー部は各々の地域を管轄しているものの、お客さまのアジア全域でのクロスボーダー取引の増加に伴い、両部の協働案件も増えたほか、プロジェクトファイナンス案件など、市場営業部門と他部門との協働事例も増加した(注21)。
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第1章不確実性が増す外部環境
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第2章新たなガバナンスの下でのグループ・グローバル経営の強化
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第3章「カラを、破ろう。」
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第4章「お客さま本位の業務運営」の徹底
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第5章リテール金融ビジネスにおけるビジネスモデルの変革
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第6章ホールセールビジネスにおける真のソリューションプロバイダーを目指して
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第7章グローバル・プレーヤーとしての進化
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第8章高まる不透明感の下での市場ビジネスの進化
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第9章アセットマネジメントビジネスの強化
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第10章デジタル戦略の本格展開
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第11章G-SIBsとしての内部管理態勢の確立
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第12章業務インフラの高度化
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第13章グループ経営を支える人事戦略
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第14章持続可能な社会の実現に向けた取り組み
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第15章「コロナ危機」への対応
- おわりに