(2)中長期的な視点に立った外貨ALM体制の構築

三井住友銀行では従前より、リスク統括部担当役員および市場営業部門統括責任役員がALM(Asset Liability Management)委員会の委員長を務め、市場リスク・流動性リスクの管理を行ってきた。しかし、世界金融危機発生以前は、インターバンク調達などの市場性短期調達と外貨預金によって外貨所要額のほぼ全額を調達していた。世界金融危機後に中長期外貨調達への取り組みが始まると同時に、調達コストを踏まえながら外貨建資産・負債の中長期計画を立案・管理するための組織的な対応も検討課題となった。

安定的な外貨調達手段は主として、預金、社債発行や中長期円投等の市場性の中長期調達であるが、いずれの手段にも調達コストが発生する。預金金利には預金獲得競争の激化に伴うプレミアムが乗り、中長期の市場性調達も短期調達に比べて調達コストが高い。加えて、2010年に発生した欧州債務危機(注14)による外貨調達コストの上昇が短期間では終息しないこと、また、NSFRのように調達コスト押し上げにつながる国際金融規制の導入が見込まれることなど、外貨調達コストの高止まりも予想された。

2011年12月、三井住友銀行は市場営業部門、国際部門、リスク統括部、および経営企画部を主要参加者とする外貨資金繰り対応ワーキング・グループ(WG)を組成し、市場環境に応じた外貨調達の方法と金額を定期的に協議することとした。預金増強のために国際部門などと協働すること、中長期調達を安定的に行うために投資家層拡大や調達手段拡充に注力することなどがWGでの具体的な検討項目となった。2013年、市場営業部門に外貨ALMの専任担当グループを設置し、外貨の調達見込み額をベースに翌年度以降の外貨資産の積み増し計画を毎年策定する運営・管理体制が出来上がった。