第5章
個性溢れる信託ビジネスの展開
1.信託銀行の買収と「PRESTIA<プレスティア>」の創設
(1)SMBC信託銀行の誕生
三井住友銀行は、2002 年 4 月の銀行法等の一部を改正する法律の施行を受けて銀行本体による信託業務に参入し、その後、2004年12月の信託業法改正により業務範囲を拡大させていった。具体的には、2002年12月に金銭債権信託による資産流動化業務を開始したのを皮切りに、クリアリングトラスト(注1)(資金分別管理信託、2003年12月)、遺言信託業務(2005年2月)、担保権信託(注2)(2008年1月)など、戦略分野を中心に業務を拡大していった。その一方で、遺言信託業務を除く個人向け信託や、規模の利益が働く証券代行業務(注3)・カストディ業務などについては、一部に参入を開始した分野はあったものの、検討段階でとどまっていた。
こうしたなか、フランス大手金融機関ソシエテ・ジェネラルの100%出資子会社であるソシエテジェネラル信託銀行が、日本市場におけるビジネス展開で苦戦しているとの情報を入手した三井住友銀行は、ソシエテ・ジェネラル宛てに同信託銀行の買収を直接打診。その後の交渉の結果、三井住友銀行によるソシエテジェネラル信託銀行の買収について両社の間で合意が成立し、2013年7月、発表に至った。
三井住友銀行は2013年10月に、ソシエテジェネラル信託銀行を完全子会社化し、商号を「株式会社SMBC信託銀行」に変更した。同行の源流は、米国の大手金融機関ケミカル・バンクが1986年に設立したケミカル信託銀行で、その後、親会社の変更などによりチェース信託銀行、エス・ジー・信託銀行と名称を変え、2010年にソシエテジェネラル信託銀行に改称。買収時の預り資産規模は4,079億円と小規模ながら、プライベートバンキング業務に特化した銀行として、三井住友銀行にはない商品をそろえていた。また、信託業務をフルラインアップで行うことができるという点も、買収の目的の一つだった。

SMBC信託銀行は、お客さまと従業員をそのまま引き継ぎ、ソシエテ・ジェネラルグループとのTSA契約(注4)によりサービスレベルを維持すると同時に、三井住友銀行との協働や人員の派遣等により、富裕層ビジネスの強化に着手した。
また、SMBC信託銀行買収後に、当社グループ(注5)としての信託業務の方向性について検討を行い、既に三井住友銀行が取り組んでいた法人向けソリューション業務および遺言信託などの相続関連業務については引き続き三井住友銀行中心に対応し、プライベートバンキング業務や事業承継業務、その他新たな信託機能の活用についてはSMBC信託銀行を中心に対応していくこととした。
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第1章不確実性が増す外部環境
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第2章新たなガバナンスの下でのグループ・グローバル経営の強化
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第3章「カラを、破ろう。」
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第4章「お客さま本位の業務運営」の徹底
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第5章リテール金融ビジネスにおけるビジネスモデルの変革
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第6章ホールセールビジネスにおける真のソリューションプロバイダーを目指して
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第7章グローバル・プレーヤーとしての進化
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第8章高まる不透明感の下での市場ビジネスの進化
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第9章アセットマネジメントビジネスの強化
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第10章デジタル戦略の本格展開
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第11章G-SIBsとしての内部管理態勢の確立
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第12章業務インフラの高度化
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第13章グループ経営を支える人事戦略
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第14章持続可能な社会の実現に向けた取り組み
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第15章「コロナ危機」への対応
- おわりに