(コラム)

政策保有株式の削減

日本企業による株式の持ち合い慣行に対しては、日本企業の資本効率性が低い一因であるという指摘や、「もの言わぬ株主」が存在することで、コーポレートガバナンスの形骸化を招く恐れがあることなどを背景に、海外投資家を中心に根強い批判がある。こうしたなかで、東京証券取引所が2015年6月に施行した「コーポレートガバナンス・コード」は、上場企業に対し、政策保有株式の保有に関する方針の開示や、保有の中長期的な経済合理性や将来見通しについての取締役会における検証、議決権行使基準の策定・開示を求めた。

当社は2015年4月、財務部の部内室として「政策投資室」を設置するとともに、同年5月策定の「SMFGコーポレートガバナンス・ガイドライン」において、①政策保有株式の保有に関する方針を開示すること、②毎年、取締役会で中長期的な経済合理性、将来見通しを検証し、保有の狙い、合理性を確認すること、③議決権行使基準を策定することを明記した。

同年7月、当社はコーポレートガバナンスに関する報告書において「政策保有に関する方針」を公表し、「保有の合理性」が認められる場合を除き、原則として政策保有株式を保有しないこととした。同時に、「政策保有株式に係る議決権行使基準」も公表し、「原則として、全ての議案に対して議決権を行使」するとともに、2015年6月以降、「政策保有先の中長期的な企業価値向上の観点から、当該企業の経営状況も勘案し、議案ごとの賛否を判断」することとした(注22)

三井住友フィナンシャルグループの「政策保有に関する方針」

  1. 当社は、グローバルに活動する金融機関に求められる行動基準や国際的な規制への積極的な対応の一環として、当社グループの財務面での健全性維持のため、保有の合理性が認められる場合を除き、原則として、政策保有株式を保有いたしません。
  2. 保有の合理性が認められる場合とは、中長期的な視点も念頭において、保有に伴うリスクやコストと保有によるリターン等を適正に把握したうえで採算性を検証し、取引関係の維持・強化、資本・業務提携、再生支援などの保有のねらいも総合的に勘案して、当社グループの企業価値の向上に繋がると判断される場合を言います。
  3. 政策保有株式については、定期的に保有の合理性を検証し、合理性が認められる株式は保有いたしますが、合理性がないと判断される株式は、市場に与える影響や発行体の財務戦略など、様々な事情を考慮したうえで、売却いたします。

さらに、2015年11月、当社は政策保有株式の中期的な削減計画を公表した。具体的には、「次期中期経営計画終了(2020年3月末)までに、政策保有株式の普通株式等Tier1資本に対する比率を2015年9月末時点の28%対比半減(14%台)させることに目途をつける」という目標を掲げた。普通株式等Tier1比率半減目標は、簿価にして5,000億円程度の政策投資株式の削減に該当した。

株式の持ち合いが、国内の金融取引慣行としてなされてきた経緯等を踏まえ、政策保有株式の削減については、お客さまの理解を得ながら丁寧に進めるとともに、実際の売却も、市場に与える影響や発行体の財務戦略など、様々な事情を考慮したうえで実施した。その結果、2020年9月末時点の残高は約1兆3,000億円と、2015年9月対比5,000億円の削減目標を達成することができた。