(2)信用リスク管理の高度化

グループ・グローバルベースの信用リスク管理の強化

当社グループの拡大に伴い、連結ベースの信用リスク管理の重要性が高まったことから、当社は2013年4月、与信業務に関わる基本的な指針・規範を定めた「グループクレジットポリシー」を重要規程として制定した。これにより、グループ各社が公正で規律正しい与信運営を実践するとともにグローバルスタンダードに基づいた信用リスク管理を確立し、より適切なリスクテイクを行う文化の創造を図ることとした。さらに、グループベースで重複与信先に対する与信方針等を共有するとともに、重要なリスクアペタイト指標のモニタリングやリスクテイク施策、ポートフォリオ運営状況等をグループベースで議論・情報共有を行い、PDCAサイクルを回すこととした。

グローバルベースの信用リスク管理の強化の観点では、三井住友銀行が2011年9月、投融資企画部・国際統括部・システム統括部の3部共同プロジェクトとして、欧州、米州、アジアの各ユーザー部署からメンバーの参加を仰いで「グローバル与信管理態勢改善プロジェクトチーム(GBR-PT:Global Business Re-engineering Project Team)」を組成し、グローバル与信管理態勢強化に向けた業務基盤(与信関連システム、与信稟議/事務標準化、規程手続、グローバルな導入研修体制の構築等)の整備を進めた。これは、海外与信管理システム「GCM(Global Credit Monitoring)システム」の導入から既に10年がたち、この間の環境変化、すなわち、①お客さまのグローバル化の進展に伴う、海外における与信残高、顧客数の増加と顧客所在国の多様化、②案件や海外採用従業員が大幅に増加するなかで、フロント/ミドルにおける管理態勢強化の必要性の高まり、③プロジェクトファイナンスや地域をまたがる複数拠点の協働を通じて実行する与信等、与信形態や与信条件管理の複雑化などに対応するものであった。

新たな「グローバル与信管理システム」(通称:GBRシステム)は、機能が多岐にわたる統合システムだけに、稼働までの4年間に携わったプロジェクト・メンバーは約400人に上り、そのうち7割強が海外の現地採用従業員であった(注32)。2015年11月、GBRシステムが導入され、①各種顧客情報の一元化、②与信稟議の標準化と電子決裁、③勘定系システムとの連携による実行時チェック、④リスクリターン管理機能の強化、⑤GBRを通じて整備された与信関連情報の活用強化などが実現した。

また、プロダクトの多様化やビジネスの地域的拡大を背景に、三井住友銀行は2014年に、プロジェクトファイナンス格付制度の改定や証券化案件の評価手法の高度化、海外一般事業法人向け格付制度の改定等を実施した。

大口集中リスク管理

大口集中リスクについては、2013 年1月に金融審議会「金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に関するワーキング・グループ」が報告書「金融システム安定等に資する銀行規制等の見直しについて」を公表したほか、2014年4月にはバーゼル委員会が最終規則文書「大口エクスポージャーの計測と管理のための監督上の枠組」(注33)を公表。これらを踏まえ、2014年12月、改正銀行法施行令・銀行法施行規則等が施行され、大口信用供与等規制が強化された(注34)。このような流れを受けて、三井住友銀行は行内規程を改定し、管理態勢をさらに強化した。

外部環境の変化に応じた与信管理の強化

2011年以降、資源価格が高止まりするなかで、三井住友銀行では非日系資源関連のエクスポージャーが増加した。これを受け、三井住友銀行は2014年4月、資源価格下落時の債務者の劣化予兆を把握し、早期にしかるべき行動を取る仕組みを定めるとともに、資源関連与信の取り組みに際しての検証項目を明確化した。

その後、新興国経済が減速傾向に転じるとともに、米国シェール革命(注35)により原油供給が増加するなどの環境変化が生じると、2015年12月より、原油などの資源関連、不動産といった市況変動の影響を受けやすい与信を対象に、市場価格の見通し、取り組みの目線や方針等について協議することとし、リスク認識・環境認識の変化を把握した場合や管理指標があらかじめ定めた水準に抵触した場合には、関係各部と協議のうえ、機動的に与信運営に反映させることとした。加えて、業種・地域・与信形態別のストレスシナリオを作成して、ストレステストを精緻化するなどの取り組みを行った。