(3)事業統合後の対応

事業統合は、合併・買収した時点で完了するわけではない。想定通りの効果を発揮していくためには、合併・買収後の統合(PMI:Post Merger Integration)によりシナジーを最大化していくことが重要である。当社、三井住友銀行、SMBC信託銀行は、ガバナンスやリスク管理など様々な観点を考慮し、PMIとして以下のような措置を取った。

  • SMBC信託銀行を、当社グループの「主要グループ会社」に追加。これに伴い、同行はグループ戦略会議(注7)に参加
  • SMBC信託銀行の経営企画部内に戦略企画室を設置し、PMIを一元管理
  • 内部管理態勢の整備(リスク統括部・コンプライアンス部等をプレスティア事業部門の外に配置する一方で、部門内にプレスティア・リスク&コントロール委員会を設置)
  • コスト構造改革や社内プロセスの高度化を実施(人件費・物件費・広告宣伝費等の抑制による経費率の引き下げ)
  • 新システムの開発と移行

PMIの中でSMBC信託銀行が特に重視したのは、「一体感」を醸成し、社内融和を図ることだった。SMBC信託銀行には、元ソシエテジェネラル信託銀行の従業員、シティバンク銀行の出身者、三井住友銀行からの出向者、SMBC信託銀行となってからの入行者など様々な背景を持った従業員が在籍していた。

そこでSMBC信託銀行は、2015年11月に改定した経営理念の中に「多様性を尊重」「信頼・責任を基本としたチームワーク」とのキーワードを入れ、「法令遵守」「お客さま」と並んで「役職員」を重視し、全社一丸となって独自の特徴ある銀行を作り上げていくとの姿勢を打ち出した。2017年9月には、SMBCグループの「Five Values」に加えて、「PRESTIA」の頭文字を用いた独自のコアバリューを制定し、その中に「Respect(尊敬)」や「Synergy(シナジー)」といった項目を入れ、敬意と感謝、協力関係といった価値観を共有した。

(画像)プレスティアの頭文字を用いたSMBC信託銀行のコアバリュー
SMBC信託銀行のコアバリュー

また、シティバンク銀行リテールバンク事業統合を決めた直後の2016年1月には、社内融和を象徴する誌名を冠した社内報『Harmony』を創刊した。その中で、毎号社長自らが巻頭コラムを執筆したほか、「知」をテーマに各部の活動を紹介して相互理解を深めていった。このほか、異なる部署の従業員が職場を交換して体験するブリッジ・プログラムや、部署を問わず誰でも参加できるオープン・カレッジといった取り組みを実施し、社内融和を図るとともに、新たな企業文化を作り上げた。

統合作業のうち、実務面において最も難しかったのは新システムへの移行であった。事業統合後2年9ヵ月間はシティバンク銀行のシステムを借用することとなったが、その間に新たなシステムを開発。全面的なシステム移行は、2018年7月17日に実施された。多くのコストとマンパワーをかけて準備した結果、無事、大きな障害もなく新たなシステムへと移行した。