(5)お客さま満足の向上に向けた取り組み

店舗改革はデジタル化という社会変化を先取りし、お客さまの行動変容を促す「改革」であったが、三井住友銀行では、お客さまの利便性が低下していないか、想定した通りの効果が出ているかなど、施策の結果や影響に十分留意しながら改革を進めた。店頭待ち時間やデジタルチャネル利用率など各種指標の傾向・変化の要因を分析するとともに、「お客さまの声DB」(注16)などによりお客さまからの不満の声や意見を収集した。

実際、お客さまからの直接の声、あるいは従業員を通じた声として、店舗改革に伴う不満・苦情は一定数発生していた。近隣の支店・ATMがなくなったことへの不満、後方事務集約による不慣れな事務手続や連携ミスに起因する店頭待ち時間増加に対する不満などが一部に発生。こうしたお客さまの声に対しては、一つひとつ真摯に対応していった。たとえば支店やATMなどアクセスポイント減少については、リモートチャネルの機能拡充を図る一方で、2018年3月に約3年ぶりの新店となる麻布十番支店を出店して以降、2021年3月までに11ヵ店を新規に出店した(出張所を含む)。また2019年9月には、三菱UFJ銀行との間で店舗外ATMの共同利用(注17)を開始するなど、お客さまとの接点拡大に努めた。待ち時間の増加に対しては、来店予約対象業務の拡大(注18)や店頭待ち人数のホームページへの掲示などにより来店の平準化を図るとともに、個店の状況に応じた端末の増設や本部による応援実施等きめ細かく対応した。

また営業店で働く従業員の意見にも、これまで以上に広く耳を傾けた。これは、①従業員が日々お客さまと接してその声をよく聞いていたこと、②諸施策を3年という時間をかけて順次実施したことから、先行実施店における実態を把握し、その後の施策に活かしていく必要があったこと、③店舗改革は従業員にも大きな行動変革を求める施策であったためである。

たとえば、リテール部門の統括責任役員をはじめ本部の関係者が支店を往訪して従業員と意見交換を行う「タウンホールミーティング」を、2017年からの3年間で原則全支店において実施したほか、事務サービス部においては「タウンホールミーティングcafe」を行った。また、各施策実施にあたっては、通達等で一方的に発信するのではなく、TV勉強会や「店頭改革News」により、先行事例の紹介や手続改定内容の案内などを実施。このほか、3ヵ月に1度実施した従業員向けアンケートを通じて個別施策の影響を測定し、その結果に応じた対策を講じていった。

2017年度からの中期経営計画に基づく店舗改革は、ほぼ計画通りに進展した。2020年度にスタートした新たな中期経営計画ではさらに改革を進め、約440拠点中300拠点ほどを、機能を限定・軽量化した店舗とし、個人のお客さま向けコンサルティングに注力するとの方針を打ち出し、店舗改革により約250億円のコスト削減の実現を目指すとした。そのために、2020年10月から現金管理の外部委託(注19)の試行を開始するなど、次なる改革を進めている。