(4)事務手数料の戦略的な見直し

三井住友銀行では、環境負荷軽減やお客さまサービス向上のために、Web通帳の利用促進やSMBCダイレクト・Web21等リモート取引の機能向上などにより、ペーパレーレス化・デジタル化を図っている(注5)。こうした取り組みを加速させ、お客さまのデジタルチャネル利用を後押しする目的で、諸手数料についても戦略的な水準設定を進めている。また手数料の一部に、コストに見合った水準設定となっていないものがあったことから、事務品質を維持していくために、適正な手数料体系への見直しも行った。

デジタルサービスの利用促進を目的とした手数料の見直しとしては、たとえば、SMBCダイレクト本支店振込手数料の無料化(2018年7月)、「Web21<ライト>タイプ」(月額無料、振込手数料廉価)のサービス開始(2019年4月)、「Gets(注6)デビュー」月額無料化(2020年10月)などがある。デジタルサービス利用に関わる手数料の引き下げ・無料化を図る一方で、紙通帳利用手数料およびデジタル未利用手数料を導入した。紙通帳利用手数料は、個人のお客さまが保有する通帳発行型の普通預金口座に関わる手数料で、2021年4月以降に新規で口座を開設する場合に適用している。法人等のお客さまについても今後Web通帳導入を予定しており、導入以降に新規で通帳発行型の普通預金口座を開設する場合には、紙通帳利用手数料を適用することとしている。デジタル未利用手数料は、法人・個人問わず、リモートチャネルの利用設定が未済となっているなど口座利用状況を加味して適用する手数料で、2021年4月以降に新規開設する普通預金口座が対象となっている。いずれの手数料も、デジタル取引を利用するお客さまにとって魅力的な体系とすることで、デジタル化の促進を図っている。

上記以外に改定・新設した手数料としては、円貨両替手数料の改定(2017年5月、2021年2月再改定)、硬貨入金整理手数料(注7)の新設(2019年12月)、紙の依頼書による海外送金手数料の改定(注8)(2019年12月)、手形・小切手発行手数料の改定(2020年4月)、非居住者円建送金・国内外貨建送金手数料の改定(注9)(2021年2月)などがある。

手数料に関しては、2020年度に銀行業界全体の課題として、為替取引における手数料のあり方が問われることとなった。すなわち、公正取引委員会が2020年4月に公表した報告書(注10)や、政府が2020年7月に閣議決定した「成長戦略実行計画」において、決済インフラの見直しやキャッシュレス決済の環境整備が求められたことから、①銀行間手数料の見直し、②資金移動業者の全銀システム(注11)参加、③多頻度小口決済の利便性向上の3点について検討が行われた。①について、全銀ネットは2021年3月に銀行間手数料の見直しを公表(2021年10月より改定)したほか、②については、2021年1月に全銀システム参加要件を「2022年度中を目途に、資金移動業者にも拡大することが望ましい」とする報告書を公表した。また③について、三井住友銀行を含む都銀5行は、2020年8月に小口決済インフラ構想「ことらプロジェクト」の検討を公表した(注12)。三井住友銀行はいずれの取り組みについても、銀行業界における検討を主導した。