4.投資銀行部門からファイナンシャル・ソリューション部門へ
三井住友銀行は、2001年4月の三井住友銀行発足以来存続してきた投資銀行部門を、2017年4月にファイナンシャル・ソリューション部門に改称した。発足時の投資銀行部門はプロダクト対応組織であり、お客さまの投資銀行業務に関するニーズに対して、該当するプロダクト所管部が法人部門および企業金融部門傘下の営業店と協働し、高度な金融サービスを提供することが期待されていた。
しかし、時代の変化とともに、投資銀行部門の所管業務は大きく変遷した。具体的に、発足時の注力領域(5項目)は以下のように変化した。
①証券事業強化・グループ会社活用
2009年10月の日興コーディアル証券買収が引き金となり大和証券との提携は解消。2013年には証券事業部(コーポレートスタッフ部門)に証券・アセットマネジメント戦略企画機能を移管したため、部門所管に「投資銀行業務」との乖離が生じつつあった。2017年度からはSMBCグループ経営体制の見直しにより、SMBC日興証券をグループの投資銀行業務の中核と改めて位置づけた(注33)。
また、2013年のSMBC信託銀行設立をきっかけに信託業務に関わる連携はリテール部門・ホールセール部門が主導することとなった。
②新種の金融プロダクツ提供
プロジェクトファイナス等がグローバルなエッジへと成長する一方、ファイナンス系の新商品の開発余地は徐々に縮小していった。
③市場型間接金融市場拡大への対応
シンジケートローン等の国内市場は2001年から2008年にかけて急拡大するも、その後は成熟期に入った。
④IT関連企業等へのビジネスモデル提案
EC業務部がパソコンバンクサービス(注34)、パーフェクト(注35)、国内CMS(注36)等、システム商品の企画および営業店支援を実施。2012年4月にはトランザクション・ビジネス本部(注37)が新設され、EC業務部はアセットファイナンス営業部(注38)と共に独立、投資銀行部門内の決済ファイナンスユニットは廃止された。
⑤資産運用・DC(注39)業務
2002年には投資銀行統括部資産運用事業室が個人部門へ業務移管
以上から、投資銀行部門の所管業務範囲はそれまでの業務移管を通じて縮小しており、主としてファイナンス系プロダクトを主体とするソリューション提供、および業務開発機能に収斂していった。2017年4月には①グローバルプロダクト、②O&D(注40)および投資家ビジネスの推進、③中長期のR&D(注41)等の新規ビジネス・新商品開発を部門の重点領域と位置づけた。そうした所管業務の変化や、今後の注力分野を的確に表す名称としてファイナンシャル・ソリューション部門に名称変更したのである。
さらに2020年4月にはホールセール部門にファイナンシャル・ソリューション本部を設置し、ファイナンシャル・ソリューション部門を廃止した。組織改正の意図は、法人のお客さまのニーズが多様化・複雑化するなか、ホールセールプロダクト機能をホールセール部門に集約し、一体的な戦略策定・業務運営の下、非金融領域も含めたソリューション力の強化を図ることであった(図表6-6)。その具体的な成果として、①注力プロダクトへの重点的な資源配分と専門性向上・リスクテイク力の強化、②グループ会社も含めた事業部門内のプロダクト・ソリューション開発機能の連携強化、③汎用プロダクトの効率化等を通じた営業の生産性向上が期待されている。

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第1章不確実性が増す外部環境
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第2章新たなガバナンスの下でのグループ・グローバル経営の強化
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第3章「カラを、破ろう。」
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第4章「お客さま本位の業務運営」の徹底
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第5章リテール金融ビジネスにおけるビジネスモデルの変革
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第6章ホールセールビジネスにおける真のソリューションプロバイダーを目指して
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第7章グローバル・プレーヤーとしての進化
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第8章高まる不透明感の下での市場ビジネスの進化
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第9章アセットマネジメントビジネスの強化
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第10章デジタル戦略の本格展開
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第11章G-SIBsとしての内部管理態勢の確立
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第12章業務インフラの高度化
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第13章グループ経営を支える人事戦略
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第14章持続可能な社会の実現に向けた取り組み
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第15章「コロナ危機」への対応
- おわりに