(2)お客さまへのサービスの提供の仕方を変える
ポイントの1つ目である「お客さまへのサービスの提供の仕方を変える」とは、デジタル技術を活用してリモート取引や店頭のペーパーレス化を進めることである。お客さま自身にリモート機器等を操作してもらうことにより時間や場所の制約を極力なくし、「簡単・迅速・便利」にサービスを利用できるようにすることを目指した。主な取り組みは図表5-6の通りである。

商品・サービスの内容・機能拡充と同時に重視したのは、利用促進に向けた活動であった。なぜならば、店舗改革実施前の試行において、リモート取引の利便性や価格優位性を知らないお客さまが多いことが判明したことから、まずは認知度を向上させて、使ってもらうことが重要だと考えたからである。
そこで、インターネットバンキングでの振込やWeb通帳への切り替えなど、リモート取引の利用に応じて特典を付与するお客さま向けキャンペーンをたびたび展開すると同時に、営業店においてはお客さまをリモート取引へと誘導するための取り組みを行った。コンテストなどを軸にした「デジタル・フェスティバル」や「デジタル・デビューコンテスト」などの全店運動を実施してリモート取引誘導を後押しするとともに、各店に「店頭改革アクションプラン」を策定させ、拠点の実情に合わせたリモート取引誘導を進めていった。

また、営業店のロビーにおいてリモート機器への誘導や使い方の案内を行う従業員を「ロビーコンシェルジュ」と称し、ロビーコンシェルジュの動き方などをまとめた「ロビー体制構築マニュアル」を策定し、営業店の従業員全員がロビーコンシェルジュとして活動することを目指した(2017年10月策定。2018年4月「店頭体制構築マニュアル」に改定)。このほか、ロビーコンシェルジュを指導する「コンシェルジュ・インストラクター」の配属(2017年10月)、お客さまにリモート取引を案内するためのロビー用タブレット(2017年7月)および店頭用ポケットWi-Fi(2018年2月)の各店配布、従業員のデジタルスキル向上を目的とした「デジタルアンバサダー制度」の創設(2018年8月)など、関連各部が協力してリモート取引を推進した。
リモート取引の中でも特に注力したのは、ペーパーレス化の観点から影響の大きかったWeb通帳の推進である。Web通帳の対象を全ての普通預金に拡大し(2018年9月)、入出金明細をSMBCダイレクトにより取引後30年間照会可能とする(2019年10月)など機能向上を図る一方で、Web通帳切替キャンペーンを複数回実施したほか、「Webファースト」を合言葉に、店頭口座開設時のWeb通帳提案や紙通帳からWeb通帳への切り替えを推進した。こうした取り組みにより、2020年度時点では新規口座開設時の8割以上がWeb通帳となっている。
このほか法人事務については、取引種類が多岐にわたるうえ、お客さまごとの事情も異なることから、法人営業部やエリアなども一体となってリモート取引への移行を進めた。振込や税公金支払などトランザクション中心のお客さまに対しては、高機能ATMの利用推奨や、初期費用・月額料金を無料にした「Web21<ライト>」(2019年4月導入)の提案などを行った。法人営業部やエリアの担当者が付いているお客さまについては、デジタル化対象項目をリストアップし、個別折衝によりBPR(注13)を推進した。
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第1章不確実性が増す外部環境
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第2章新たなガバナンスの下でのグループ・グローバル経営の強化
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第3章「カラを、破ろう。」
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第4章「お客さま本位の業務運営」の徹底
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第5章リテール金融ビジネスにおけるビジネスモデルの変革
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第6章ホールセールビジネスにおける真のソリューションプロバイダーを目指して
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第7章グローバル・プレーヤーとしての進化
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第8章高まる不透明感の下での市場ビジネスの進化
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第9章アセットマネジメントビジネスの強化
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第10章デジタル戦略の本格展開
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第11章G-SIBsとしての内部管理態勢の確立
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第12章業務インフラの高度化
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第13章グループ経営を支える人事戦略
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第14章持続可能な社会の実現に向けた取り組み
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第15章「コロナ危機」への対応
- おわりに