(3)「3つの防衛線」の強化

当社および三井住友銀行は2018年4月、重要規程である「統合リスク管理規程」において、「3つの防衛線」の定義を明確化して統合リスク管理における各部門の役割を規定した。「3つの防衛線(three lines of defense)」とは、企業組織を、①事業部門等(一線)、②管理部門(二線)、③内部監査部門(三線)の3つに分類し、それぞれが上級経営者と取締役会の監督と指揮の下、「ディフェンスライン」としての役割を担うことで効果的、効率的なリスク管理と内部統制が可能になるとの考え方(注28)。バーゼル委員会が2015年7月に公表した「銀行のためのコーポレート・ガバナンス諸原則」も、リスクガバナンスの枠組みとしてこの「3つの防衛線」を推奨しており、グローバル金融機関における「ベスト・プラクティス」と位置づけられる(注29)

2019年4月には、「3つの防衛線」の観点から、三井住友銀行のリテール部門にリテールリスク管理部、ホールセール部門のホールセール統括部内にホールセールリスク管理室をそれぞれ新設し、一線におけるリスクオーナーシップを高めてフロントにおけるリスク管理やコンプライアンス態勢を強化した。

図表11-9 SMBCグループの一線、二線、三線がそれぞれ担う役割・責任
(図表11-9)SMBCグループの「3つの防衛線」

しかし、三井住友銀行ニューヨーク支店が米国ニューヨーク連邦準備銀行より、マネー・ローンダリング防止に関する内部管理態勢等が不十分との指摘を受けると、海外拠点における「3つの防衛線」の役割・手続き等の明確化や、一線のフロントにおけるリスクオーナーシップの定着、二線に該当する本店各部による海外業務管理態勢の強化等が課題として浮上した。そこで、三井住友銀行は、2020年4月以降、非日系審査部署(米州審査部、欧州審査部、アジア・大洋州審査部、東アジア審査部(注30)、国際審査部)および海外リスク管理部署(米州リスク管理部、欧州リスク管理部、アジアリスク管理部)をリスク管理部門に組み入れ、明確に二線として位置づけた。

この二線化に合わせ、2020年4月より、従来地域本部長にレポートしていた各地域CRO(Chief Risk Officer)が東京のグループCROに直接報告する形にレポーティングラインを変更し、グローバルなリスク管理態勢をグループCROが一元的に統括する体制を整えた。