英国のEU離脱の欧州地域戦略への影響と対応
英国は2016年6月、EU(European Union、欧州連合)からの離脱の是非を問う国民投票を実施した。事前の大方の予想とは異なり、離脱支持が51.9%と残留支持を僅差で上回り、英国のEU離脱、いわゆるBrexitが決まった。英国は2017年3月、EU離脱をEUに正式に通知したものの、英国とEUの離脱協議は英国の政治が混迷するなか難航し、離脱期限が2度にわたって延期された。2020年1月、英国とEUは離脱協定を締結し、同月末、英国は正式にEUから離脱した(注8)。
英国とEUの交渉が紆余曲折し、英国とEUの金融市場の一体性に対する不確実性が強まるなか、当社は、欧州のお客さまに対する持続的・安定的な金融サービスの提供を確保するため、英国のEU離脱に備えた体制整備を着実に進めることとした。EUでは単一免許(シングルパスポート)制度(注9)の下、金融機関がいずれかのEU加盟国で認可を取得すれば、域内の他の加盟国においても金融事業を展開できる。当社も、英国現地法人の欧州三井住友銀行(Sumitomo Mitsui Banking Corporation Europe)および英国SMBC日興キャピタル・マーケッツ会社(SMBC Nikko Capital Markets Limited)が英国の金融業免許に基づいて、欧州大陸において金融事業を展開してきた。そのため、英国がEUを離脱すれば、英国で取得した金融免許ではEU域内においてこれまでと同様の金融サービスの提供ができなくなると見込まれ、EU域内における事業体制の再編が喫緊の課題となった。
三井住友銀行は英国のEU離脱を前提に、EU域内において新規に金融業免許を取得することとし、ドイツ・フランクフルトに100%子会社の新銀行「SMBCバンクEU」(SMBC Bank EU AG)を設立。SMBC日興証券もフランクフルトに「欧州SMBC日興キャピタル・マーケット会社」(SMBC Nikko Capital Markets Europe GmbH)を設立し、両社とも2019年4月より営業を開始した。フランクフルト以外に、パリ、ブラッセル、アムステルダム、ダブリン等も検討対象となったが、フランクフルトが欧州中央銀行(ECB)の所在地であり、金融センターとして金融人材が豊富なことなどが決め手の一つとなった。
英国の EU 離脱に伴う営業体制見直し等を踏まえ、欧州三井住友銀行も2020年10月、商号を「SMBCバンクインターナショナル」(SMBC Bank International plc)と改称し、当面は欧州の本部機能を残したまま、営業を継続することとなった。
こうして当社は新たな業務体制へ移行し、欧州におけるお客さまへの持続的・安定的な金融サービスを提供するとともに、お客さまの拠点戦略の見直しや物流および資金ニーズの変化に対応したソリューションの提供に努めた。

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第1章不確実性が増す外部環境
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第2章新たなガバナンスの下でのグループ・グローバル経営の強化
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第3章「カラを、破ろう。」
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第4章「お客さま本位の業務運営」の徹底
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第5章リテール金融ビジネスにおけるビジネスモデルの変革
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第6章ホールセールビジネスにおける真のソリューションプロバイダーを目指して
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第7章グローバル・プレーヤーとしての進化
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第8章高まる不透明感の下での市場ビジネスの進化
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第9章アセットマネジメントビジネスの強化
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第10章デジタル戦略の本格展開
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第11章G-SIBsとしての内部管理態勢の確立
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第12章業務インフラの高度化
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第13章グループ経営を支える人事戦略
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第14章持続可能な社会の実現に向けた取り組み
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第15章「コロナ危機」への対応
- おわりに