第9章
決済ビジネスの戦略的強化

1.決済ビジネス推進体制の構築

2011年4月よりスタートした中期経営計画(2011~2013年度)は、「決済ビジネス」を「非アセットビジネス」として5つの「戦略事業領域」の一つと位置づけた。そのうえで、①今後もマーケットの成長が見込まれ、当社グループ(注1)が優位性を発揮し得るアジア圏を中心に決済ビジネスを強化し、「アジア地域のCMS(注2)で外銀トップ3を展望する」、②国内においては部門間・グループ間連携を強化して多様化する決済ニーズを網羅的に捕捉する、という2つの方向性を提示した。

その背景には、①決済は企業取引の根幹であり、商流の把握を通じた各種ファイナンスや流動性預金の増強など、間接的な収益寄与効果が大きい、②国内の低成長が長期化する一方、アジアでは高成長が持続し、域内の経済関係も緊密化するなかで、貿易取引や域内のクロスボーダー金融取引が著しく増加した、③国際金融規制が強化されるなか、資本効率が高く安定的な収益を生む非アセットビジネスに注力する必要性が高まった、などの事情があった。実際、大手欧米銀行は、キャッシュマネジメントやトレードファイナンス(貿易金融)等の業務を中核ビジネスの一つと位置づけ、安定した収益を計上していた。

そこで三井住友銀行は、2011年4月、「決済業務戦略プロジェクト・チーム」を部門横断的に設置し、中期経営計画が提示した方向性に沿って具体的な施策の検討を行った。その検討結果を踏まえ、2011年10月、同プロジェクト・チームを発展的に解消し、当社企画部および三井住友銀行経営企画部の部内室として「決済企画室」を設置し、中長期的かつグループ横断的視点で決済ビジネス全般にわたる業務・戦略企画、推進・管理を行うこととした。

2012月4月には、決済企画室を「決済企画部」として、決済制度・インフラ企画に関わる機能等を集約した。同時に、三井住友銀行において、国際部門、企業金融部門、法人部門にまたがる「トランザクション・ビジネス本部」を新設し、債権流動化や電子債権等を取り扱うアセットファイナンス営業部、内外のEB(注3)商品開発・推進を行うEC業務部(注4)、外為EBや外国為替取引の推進、海外アドバイザリー等を行うグローバル・アドバイザリー部を同本部に移管した。これにより、法人のお客さまの多様な決済ニーズとそれに付随するファイナンスニーズに対し、関係各部が一体的かつ機動的に対応できる体制となった。2014年4月には、決済ビジネスの推進力向上を狙いとして、決済企画部をトランザクション・ビジネス本部内に位置づけるとともに、国内業務改革に伴って同本部をホールセール部門、リテール部門、国際部門(2020年4月以降、グローバルバンキング部門)にまたがる組織とした(注5)。 

また、2017年4月には、同本部内の商品開発機能を「決済商品開発部」に集約し、情報やノウハウの集約による商品開発力の強化や効率化を図った。2020年4月には、決済業務部とグローバル決済業務部を統合して、「トランザクションバンキング営業部」を新設し、国内外の情報を集約したうえで国内・海外が一体となった営業推進体制を構築した。

図表9-1 決済ビジネス推進体制
(図表9-1)決済ビジネス推進体制(2021年4月時点)