(2)マルチフランチャイズ戦略の推進

世界金融危機後、アジアをはじめとする新興国は、いち早く景気回復を成し遂げた。高い成長性を持つ新興国への取り組みを推進するなかで、三井住友銀行は「マルチフランチャイズ戦略」と呼ぶ新たなビジネスモデルを打ち出した。

三井住友銀行は2011年2月、主な新興国を対象に、出資や提携先の候補となる国および地場商業銀行等の選定を行った。さらに、2011年4月、国際統括部の部内室として「国際業務開発室」(注6)を新設し、新興国マーケットへの取り組みを強化するとともに、同マーケットを中心としたグローバルな業務戦略、出資・提携戦略などの検討を進めた。設置当初、後に実現する航空機リース事業買収(注7)にも関わった。

2012年7月には「成長戦略プロジェクト」の一つとして「グローバル戦略タスクフォース」を立ち上げ、グローバル企業対応に加えて、成長著しいアジア新興国への取り組みをさらに強めることをテーマに検討を進めた。このタスクフォースが2012年12月に経営会議メンバー宛てに提言したのが「マルチフランチャイズ戦略」であった。

「マルチフランチャイズ戦略」は、新興国において、リテール業務を含むフルバンキング業務に参入し、三井住友銀行のノウハウの移転や人材育成などを通じて、中長期的に「第2、第3のSMBCグループ」を育成しようというものである。「フルバンキング」「ローカライゼーション」「コミットメント」の3点を基本理念とし、地元経済に根差したローカル銀行として、フルバンキング業務を営み、進出国から原則撤退せずに長期にわたってコミットすることをフランチャイズ確立の必要条件と位置づけた。対象となる国の選定に際しては、市場規模(GDPや人口、成長性)、競争環境(市場成熟度や地場銀行)、産業・資源(発展可能性や資源の有無)を考慮して検討を進めることとした。

三井住友銀行は2013年4月、アジア新興国を専門に担当する部署として、「新興国戦略本部」を国際部門内に設置した(拠点は東京とシンガポール)。グローバル戦略タスクフォース、海外リテールタスクフォース(注8)および国際業務開発室の業務のうち戦略対象国に関する業務を同本部に統合した。新興国戦略本部長を国際部門副責任役員とし、中長期的視点から新興国業務に取り組む部署とした。また、新興国戦略を中心とした海外ビジネスにおけるグループ間の連携を強化するための組織として、当社に「グローバルビジネス統括部」を設置した。

図表7-3 新興国の経済成長率は、先進国の成長率を上回って推移している。特にアジアの新興国の成長率は高水準。
(図表7-3) 先進国と新興国の経済成長率(2001~2020年)