(3)企業再生ビジネス

国内の人口減少・少子高齢化の進展、世界的な保護主義の台頭や米中の対立、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展等、企業を取り巻く不確実性は増す一方である。こうした外部環境の下、三井住友銀行においては、企業の事業構造改革やビジネスモデル変革、事業承継等の取り組みを支援するためのインフラ整備が一つの課題となっていた。

そうしたなかで2019年10月に銀行法施行規則を改正する内閣府令が施行され、いわゆる「5%ルール」が緩和された(注52)。具体的には、事業再生会社の保有に関わる例外措置が拡充されたことに加え、銀行が投資専門子会社を通じて事業承継会社(注53)を保有することも可能となった。

そこで三井住友銀行は2020年2月、わが国における「企業再生ビジネス」への本格参入を企図。その中核として知見・経験を有する専門家らとの協働を通じ、対象企業の企業価値向上や事業継続等に向けた取り組みを支援する専門子会社「株式会社SMBCキャピタル・パートナーズ」を設立した。

SMBCキャピタル・パートナーズの主な事業内容は3つ。①主として事業の転換局面にある会社の発行する株式を取得し、当該会社の企業価値向上を図ること、②事業承継のための支援の必要性が生じた会社の株式を取得し、当該会社を含むサプライチェーンの維持・共存・発展を図ること、③以上を通じて、配当およびキャピタルゲインを得ることである。こうした事業展開により、企業再生・事業承継に関わる投資機会を捕捉し、新たな「収益の柱」とすることを展望している(2024年度に投資残高1,000億円程度を目指す)。同時に、景気後退に備え、既存取引先の経営危機に対応できる人材・ノウハウの蓄積も狙ったものであった。

図表6-8 新たな収益の柱になるとともに、再生人材・ノウハウの蓄積が期待される効果。
(図表6-8)企業再生・事業承継ビジネスへの期待