2. アジアを中心とする新興国における取組強化

(1)新興国におけるビジネス拡大

三井住友銀行は、2011年度よりスタートした中期経営計画において「アジアを含む新興国における商業銀行業務」を経営上重要な「5つの戦略事業領域」の一つとして選定した。アジアを中心とする新興国でトップクオリティの商業銀行業務を拡充するため、アジアを中心に、拠点網の拡充や人員の投入等を行い、事業基盤を強化した。

東アジア地域においては、日本企業の中国への進出が加速するなかで、三井住友銀行は2010年4月、三井住友銀行(中国)の日系企業取引に関わる業務推進・管理機能等の所管を国際統括部から法人企業統括部に移管した。2011年4月には、三井住友銀行香港支店および台北支店の日系企業取引についても法人企業統括部を所管とし、日系企業の本社・現地法人双方に対して、内外一体となって、より円滑で、きめ細かなサービスを提供する体制とした。2011年10月には法人企業統括部の部内室として香港に「華南ビジネス推進室」を設置して、華南エリアにおける活発な商流・ビジネスチャンスをより的確に捉え、日系企業のニーズに迅速かつ機動的に対応することとした。

三井住友銀行(中国)、香港支店、台北支店においては、拠点管理と非日系企業取引は国際統括部の所管となる一方、日系企業取引は法人企業統括部が所管する体制となった。そこで、2016年4月、新たに「東アジア本部」および「東アジア統括部」を東京に設置し、国際部門とホールセール部門の共管とした。これは、①中国、香港、台湾、韓国を中心とする東アジア地域における一体的な経営管理・業務運営体制の構築、②規制・監督対応を含む企画・管理機能の強化、③ビジネス環境の変化を捉えた日系・非日系業務推進体制の一本化を目的としていた。

2011年4月には、成長著しい韓国系グローバル企業との取引を強化するため、ソウルに「グローバルコリア営業部」を設置した。ニューヨーク、ロンドン、シンガポール、東京に駐在員を派遣し、密接なグローバル連携の下、世界各地で発生する案件を同営業部が地域横断的に統括することで、取引深耕に向けた施策を一体的に推進することとした。

2012年4月には、海外の中でもとりわけ大きな成長が期待される豪亜地域において、多様な現地企業ニーズにより一元的かつきめ細かく対応するため、同地域所在の投資銀行部門各部の現地駐在機能等を集約し、「アジア投資銀行営業部」を新設した。これにより、投資銀行部門プロダクツを総合的に提案し、お客さまのニーズにより迅速に対応していくことが可能となった。

アジア以外の新興国においては、2011年4月にニューヨークの米州営業第三部に「中南米室」を設置して中南米地域の非日系企業に対する営業機能を集約したほか、ペルー(2012年5月)、チリ(2013年5月)に拠点を設置して、日系・アジア系企業を中心とする現地企業に対するサービスの向上を図るとともに、資源開発・インフラ整備プロジェクトや貿易取引に関わる資金需要への対応を強化した。

また、欧州では、2011年6月に欧州三井住友銀行に「欧州営業第六部」を新設して欧州新興国市場(ロシア、東欧諸国、中東、アフリカ)における非日系企業、ソブリン(注4)等に関わる業務推進・管理を集約するとともに、トルコ(2012年2月)、アラブ首長国連邦(2014年3月)、チェコ(2014年6月)に拠点を開設した。2011年7月には、ロシア三井住友銀行(2009年12月開業)を増資して事業基盤を強化した。

拠点開設に加えて、地場銀行への出資比率の引き上げも行った。具体的には、2014年9月に三井住友銀行がカンボジア最大手の民間金融機関ACLEDA Bank(アクレダ銀行)に12.25%の出資を実施し、2015年9月には株式を追加取得して持分法適用会社とした(注5)。また、既に出資先となっていた香港の東亜銀行に対しても、2012年12月の増資引受に加えて2015年3月に追加出資し、出資比率を17.42%相当に引き上げ、同行を持分法適用会社とした。

図表7-2 アジアを中心に、37拠点を開設した。
(図表7-2)海外ネットワークの拡充(2011年4月~2017年3月)