(2)5つの戦略事業領域の強化と企業基盤の整備

経営目標と財務目標の実現に向け、当社は、2つの戦略施策を重点的に推進していくこととした。

戦略施策の1つ目は、「5つの戦略事業領域の強化」。当社は、①個人向け金融コンサルティングビジネス、②法人向けトータルソリューションビジネス、③アジアを含む新興国における商業銀行業務、④証券・投資銀行業務、⑤非アセットビジネス(決済・アセットマネジメント等)を、経営上重要な「5つの戦略事業領域」として選定したうえで(注5)各事業領域共通の成長ドライバーとして「銀証連携」や「グローバル展開」を位置づけ、グループ一体で実行していくこととした。

国内預貸金利ざやが長期的な縮小傾向にあり、バーゼルⅢによる自己資本規制の一層の強化が見込まれていたことから、当社グループにおいては、預金や貸出といった伝統的銀行業務をベースとしつつも、個人向け金融コンサルティングや法人に対する多様なソリューションの提供、証券・投資銀行業務、「アセットライト」な決済・アセットマネジメントビジネスの強化が大きな課題となっていた。海外ビジネスは、世界金融危機の影響で、一時停滞を余儀なくされたものの、その成長性や収益性の高さを踏まえると、改めてその強化を図る必要があった。

図表2-2 「5つの戦略事業領域」における具体的な運営方針の概要
(図表2-2)「5つの戦略事業領域」における具体的な運営方針の概要

これら戦略事業領域に関し、「決済業務戦略」や「銀証協働等、法人ソリューション提供力の強化」「法人・個人両部門間の業務推進体制の見直し」「アジアの新興国戦略」については、2011年4月に部門横断的なプロジェクトチームを立ち上げ、ビジネスモデルの変革について検討を深めた。また、三井住友銀行頭取であった國部の「今後世の中が大きく変化し、お客さまもダイナミックに動いていくなかで、我々が既存の枠組みにとどまっていて良いのか」「変化に対応してビジネスのやり方を思い切って変える時ではないか」との強い問題意識の下、2012年7月、「成長戦略プロジェクト」として、内外にまたがる6つの重要なテーマ、すなわち、「グローバル戦略」「海外リテール」「コーポレートビジネス成長戦略」「銀証リテール一体化」「相続ビジネス」「IT・ネット対応」について、それぞれ検討を行うタスクフォースを立ち上げた。

各タスクフォースは、部門横断的に若手から部店長まで幅広くメンバーを募り、5年先、10年先を展望したビジネスモデルについて検討を進めた。こうしたプロジェクトチームやタスクフォースにおける検討は、後に「国内業務改革」(注6)や「銀証リテール一体化」(注7)「アジア・セントリック」(注8)「マルチフランチャイズ戦略」(注9)などの施策として結実することとなった。

図表2-3 成長戦略プロジェクトとして設置された6つのタスクフォースと取り扱いテーマ
(図表2-3)成長戦略プロジェクト

中期経営計画における戦略施策の2つ目は、「グループ経営強化、グローバル展開を支える企業基盤の確立」であった。具体的には、①グループ経営を強化するためのグループベースの経営管理やリスク管理の高度化、②グローバル化を推進するためのグローバル人材の育成やミドルバックの強化、③その他の企業基盤強化として、業務効率化やダイバーシティの推進を、本中期経営計画期間中に進めていくこととした。

このうち業務効率化については、三井住友銀行が2011年4月、頭取を委員長とする業務効率化委員会を設置し、現場の声を吸い上げつつ、業務効率化、生産性向上およびコスト削減などに関する諸施策を行内横断的に検討していくこととした。具体的には、2010年10月の本店移転を機に取り組んだペーパーレス化を継続的に推進するとともに、営業におけるリモート端末の活用や商品管理体系の見直し、オフィスオートメーション(OA)環境の高度化等のITの活用や計数管理の効率化、新しいワークスタイルのさらなる展開を通じた業務の効率化、生産性の向上に取り組んだ。

業務効率化委員会は、3年に一度、全従業員を対象に「TCR提言」(注10)を実施して、業務の効率化・生産性向上、およびコスト削減に資する施策の提言を募集した。独創性があり、内容が特に優秀な提言に対しては、「TCR賞」として頭取表彰を実施した。応募された提言は、業務効率化委員会の構成部において実現性や効果などが検証され、有効と判断された提言については、担当部署の施策に組み込まれ、順次実行に移された。