3.内部監査機能の強化・高度化

2010年代は、相次ぐ企業の不祥事を背景に、会社法の改正(注34)20155月施行)や「コーポレートガバナンス・コード」(注35)の導入(20156月)などコーポレートガバナンスを強化する動きが加速した時代だった。コーポレートガバナンスが有効に機能するためには、同時に、独立的・中立的な立場である内部監査部門が適切に使命を果たすことが必要不可欠である。

当社は、2017年度に指名委員会等設置会社へ移行(注36)したが、内部監査の観点から言えば、監査部からの一義的なレポーティングラインを、従来の経営会議から、新しく設置した監査委員会に変更したことにより、内部監査の独立性・中立性がさらに強化されたことが重要であった。併せて、グループCxOの一つとしてグループCAE(Chief Audit Executive)を設置。グループ全体の内部監査の統括責任者としてのグループCAEの責任と権限を明確化することで、グループベースの監査機能を強化した。

一方で、金融庁の金融行政に関わるスタンスも大きく変わりつつあり、内部監査のさらなる高度化が要請されるようになった。すなわち、金融庁は2018年6月に公表した「金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)」の中で、検査・監督のあり方について「形式から実質へ」(注37)、「過去から未来へ」(注38)、「部分から全体へ」(注39)との基本的な考え方を示したうえで、2019年12月に金融検査マニュアルを廃止し、ルールベースからプリンシプルベース(注40)の金融行政への転換を図った。また、「金融機関の内部監査の高度化に向けた現状と課題」(金融庁、2019年6月)を公表し、内部監査の水準についての概念(注41)も提示した。

こうした動きを受けて当社は、経営に資する内部監査態勢を構築すべく、グループ・グローバルベースでの運営態勢高度化や、人材の強化・育成など、一層の内部監査の強化・高度化を図った。

グループ・グローバルベースでの運営態勢については、SMBCグループ主要各社の監査部長等を当社兼務とし、グループCAEを通じた監査委員会に対するレポーティングラインを強化したほか、三井住友銀行監査部門では海外駐在の共同部長に経験豊富な現地職員を新規採用・登用するなど、体制面の強化を図った。特に、三井住友銀行ニューヨーク支店における内部管理態勢等に関してニューヨーク連邦準備銀行から指摘(注42)を受けた米国では、米州駐在において、現地採用共同部長の配置、マネー・ローンダリング専担チームの設置、人員の大幅増強など迅速に措置を講じたほか、米国銀行持株会社であるSMBCアメリカホールディングス会社の監査委員長をSMBCグループCAEが兼務(注43)して、本店からの監督・支援態勢を強化した。

専門領域の監査に関しては、当社監査部(本店)にAML/CFTタスクフォース(注44)およびサイバーセキュリティ監査チームを設置して各地域の駐在と連携しながら対応したほか、システム監査グループでは、必要に応じSMBCグループ各社監査部と協働して監査チームを組成するなど連携強化・ノウハウ共有を図った。また、三井住友銀行における信用リスク関連監査の一元化、リスクアセスメントの強化やグローバルな態勢強化を図るため、2020年4月に資産監査部と監査部与信監査グループを統合し、与信監査部を設置した。

このほか、年度ごとの監査計画の策定をはじめとする監査業務の運営にあたっては、当社監査委員会や三井住友銀行監査等委員会などとの密接な連携、3つの防衛線の整備を踏まえた一線・二線との連携強化、リスクアセスメントの高度化、常時モニタリングの導入などにより、従来以上に、経営に資する監査に注力した。また、カルチャー監査(注45)など新たな監査領域に向けた取り組みやアジャイル型監査(注46)など新たな監査手法の試行導入、AIの活用など監査の高度化にも取り組んだ。

当社の内部監査態勢は、金融庁が提示した「第三段階(経営監査)」に相応しい取り組みを着実に実践していく段階にあるが、今後、「第四段階(信頼されるアドバイザー)」(注47)を目指して、さらなる高度化を図っている。