(2)航空機リース事業の買収
当社のクロスボーダーM&Aにおける有数の成功事例となったのが航空機リース事業の買収であった。三井住友銀行および三井住友ファイナンス&リースは、住友商事とともに、2012年6月、英国Royal Bank of Scotland Group(注31)からアイルランドのダブリンに本社を置く航空機リース事業(RBS Aviation Capital)を73億ドルで買収した。Royal Bank of Scotland Groupは2008年の世界金融危機後に公的資金注入を受け、同社の航空機リース事業は再建計画の中で非コア・ビジネスとして売却の対象となっていた。
RBS Aviation Capitalが保有する航空機の平均機体年齢は4年程度と航空機リース業界の中でも比較的若いうえ、ナローボディ(客席通路が一つの中小型機)が機体数ベースで全体の90%超を占めていた。ナローボディの機体は主として格安な国内線に利用されることから需要拡大が見込めるほか、大型機や高齢機に比べて機体の売却時に買い手を得やすい。こうした航空機のポートフォリオが強みの一つであり、買収後も継続してSMBC Aviation Capitalの強みとなっている。
本買収は、M&Aにあたって当社が判断基準としていた①当社の戦略との整合性、②投資リターン、③当社グループ内のシナジー効果、の各条件をクリアする好案件であった。RBS Aviation Capitalは欧米のみならず、アジアでも事業を展開しており、当社のアジア戦略にも寄与すると考えられた。また、投資リターンについても、買収初年度から高い収益を見込めた。買収のための外貨調達に関しては、国際協力銀行から30億ドルを調達し、買収資金の一部とした。
三井住友ファイナンス&リース、三井住友銀行、および住友商事は出資比率それぞれ60%、30%、10%で、2012年6月、RBS Aviation Capital買収手続を完了し、SMBC Aviation Capitalとして業務を開始した。三井住友ファイナンス&リースには従来から住友商事との共同事業による国内中心の航空機リース事業があったが、2013年4月にSMBC Aviation Capitalに統合した。
SMBC Aviation Capitalとしての業務開始にあたり、三井住友ファイナンス&リースは2012年6月、同社の経営管理を担う航空機金融部(現トランスポーテーション統括部)とリース案件に特化した審査部署として航空機審査部を設置、三井住友銀行も国際統括部(現グローバル・バンキング統括部)に航空機金融室(現航空機・船舶金融室)を新設した。さらに、2014年4月にはグローバルベースで業務を推進するために、三井住友銀行では欧米アジアの非日系航空会社営業を航空機ファイナンス営業部(現トランスポーテーション営業部)に集約、審査機能を欧州審査部航空機審査室(現欧州審査部アセットファイナンス審査室)に集約した。
RBS Aviation CapitalのCEO以下、中核社員が引き続きSMBC Aviation Capitalの経営陣に加わったことで、お客さまである航空機メーカーおよび航空会社、ならびに航空機の投資家との幅広いリレーションシップが途切れなく継続でき、スムーズに業務の拡大を図ることができた。また、グローバルに展開する同社の買収を通じて、航空機関連事業やその審査手法についても追加的な知見を得ることができた。
当社グループとしても、SMBC Aviation Capitalから航空機をリースする航空会社のファイナンスニーズに三井住友銀行や三井住友ファイナンス&リースが対応したり、SMBC Aviation Capitalが保有するリース付航空機を三井住友銀行の法人営業部のお客さまに投資対象として売却する、といった形で、航空会社や投資家のニーズへの対応力を強化できた。航空機リース・ファイナンス関連収益は2012年度から2019年度まで、年率約10%の成長を続けるなど、航空機リース・ファイナンスは三井住友銀行と三井住友ファイナンス&リースがシナジー効果を発揮し、当社が強みを持つビジネス分野の一つとなった(注32)。
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第1章不確実性が増す外部環境
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第2章新たなガバナンスの下でのグループ・グローバル経営の強化
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第3章「カラを、破ろう。」
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第4章「お客さま本位の業務運営」の徹底
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第5章リテール金融ビジネスにおけるビジネスモデルの変革
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第6章ホールセールビジネスにおける真のソリューションプロバイダーを目指して
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第7章グローバル・プレーヤーとしての進化
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第8章高まる不透明感の下での市場ビジネスの進化
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第9章アセットマネジメントビジネスの強化
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第10章デジタル戦略の本格展開
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第11章G-SIBsとしての内部管理態勢の確立
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第12章業務インフラの高度化
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第13章グループ経営を支える人事戦略
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第14章持続可能な社会の実現に向けた取り組み
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第15章「コロナ危機」への対応
- おわりに