(2)個人向け金融商品販売におけるコンプライアンスへの取り組み

世界的な潮流としての「3つの防衛線」への移行(注40)、「お客さま本位の業務運営」の重要性の高まり(注41)、コンダクトリスクの管理(注42)など2010年代を通じて強まった流れを受けて、個人向け金融商品販売におけるコンプライアンスに関しても、ルール違反の防止など形式基準にとどまらないリスクの把握・管理、営業現場や業務部門における自律的なリスク管理を強化する動きが起きていた。

三井住友銀行においても、法令等の改正に基づく行内ルールの見直しや営業店の指導・教育はもちろんのこと、モニタリングの強化、モニタリング結果やお客さまからの苦情など実態把握に基づく施策の見直しなど、コンプライアンスの強化を図ってきた。

体制整備という面では、2012年4月および2015年4月の組織改正に際して、総務部金融商品コンプライアンス室が担ってきた個人向け金融商品の販売・勧誘ルールの企画立案および個別事案の照会・相談対応機能を、順次、個人統括部個人コンプライアンス室(注43)(2014年4月からリテール統括部リテールコンプライアンス室)に移管した。これは、より営業店に近い一線の組織において企画立案・指導を行うことで、業務推進とのバランスの取れた自律的なコンプライアンス態勢を強化することを狙いとしたものである。

また、金融庁が公表したディスカッション・ペーパー「コンプライアンス・リスク管理に関する検査・監督の考え方と進め方(コンプライアンス・リスク管理基本方針)」(注44)(2018年10月)などを踏まえ、2019年4月に、リテール統括部リテールコンプライアンス室を母体に、「リテールリスク管理部」を設置。従来からの役割に加えて、リスクアセスメントやモニタリングの整備・強化を通じたリスクの予兆把握にも努め、一線によるリスクオーナーシップの醸成、自律的統制の強化を図った。

ルール整備については、「高齢顧客への勧誘による販売に係るガイドライン」(日本証券業協会、2013年12月)を受けた販売ルールの厳格化、外貨預金取引の増加や高齢者取引に関わる苦情を踏まえた高齢者取引ルールの見直しなど、実態に合わせた適正化を進めた。

一方で、金融商品取引法導入から一定期間が経過し、法の趣旨や精神の定着・浸透が見られたことから、リスク対比過重なルールや形式に陥りがちなプロセスについては見直しを行い、コンプライアンスの適切性・十分性を確保しながら、実態・実質ベースでのお客さまサービスレベルの向上を図った。