2.従業員への対応

三井住友銀行では、2020年1月以降、マスクの着用をはじめとする感染予防策の励行を従業員に促すとともに、備蓄していたマスクと手指消毒液を全従業員に配布した。国内において新型コロナウイルス感染症(以下、新型感染症)が徐々に広がり始めると、スライド勤務や休暇の積極的な取得、テレワークの利用を推奨した(注8)。また、本店各部におけるコミュニケーションツールとしてWeb会議の導入を進めていたこともあり、2月以降、各種会議や打ち合わせのWeb会議への移行が進展した(4月には国内営業店、事務系子会社に利用を拡大)。世界的な感染の拡大で各国政府における入出国管理が強化されるなか、3月には日本からの海外出張を原則禁止とした。

国内において新型感染症が急速に広がった4月以降は、「安否確認サービス」(注9)を活用して、全従業員宛てに問診メールを毎営業日発信し、従業員の日々の健康状態や勤務状況の把握に努めた。また、国内本店各部において、スプリット・オペレーションを導入するとともに、テレワークや代替執務室の確保等を通じて執務室内の出勤率を5割を目途に引き下げる運用を開始した。営業店においても、飛沫感染防止のため、アクリルパネルを窓口に設置するとともに、リモートアクセス端末の追加配付と利用可能なコンテンツの追加開放(情報系コンテンツ等)を進めて、テレワークが可能な環境整備を進めた。

(写真)アクリルパネルをはさんで接客する支店の窓口担当者
支店におけるアクリルパネルの設置

4月7日に政府より「緊急事態宣言」が発出されると、テレワークや自宅待機等を通じ、本店各部における出勤率の目途を3割未満に引き下げた。4月20日からは、本部やグループ会社の従業員(当初は250人強の規模)を営業店に派遣し、業務の継続を支援するとともに、各種管理業務の延期や効率化、ルールの見直し等を進めて、営業店や事務集中拠点における業務負担の軽減に努めた。もっとも、支店や事務集中拠点、コールセンターでは、テレワークで対応・処理できない業務が多く、日々出勤を続けざるを得ない従業員も多かった。緊急事態宣言期間中、三井住友銀行頭取の髙島は、全従業員向けのビデオ・メッセージを発出し、次のように述べて、現場で奮闘する従業員に感謝するとともに、エッセンシャルワーカー(注10)として金融仲介機能を維持していくことの重要性を訴えた。

未曽有の新型コロナウイルス感染拡大により大きな不安が募るなか、それぞれの持ち場で日々奮闘いただきありがとうございます。各営業店においては、さまざまなお客さまが来店される中、最前線で応対いただき、「3密」(注11)を避ける工夫もしていただいています。少人数運営やスプリット・オペレーションによって負担が増えた方もいらっしゃると伺っています。グループ会社の皆さんにおかれては、業務の性格上、在宅勤務が叶わない中で、むしろ増加した業務を力を合わせて遂行いただき、関係する本店各部においても、持ち場の仕事だけでなく、営業店の負担を軽減すべく奮闘いただいています。増加する事務への対応や、連休中の休日業務など、ご負担をお掛けしていますが、全行一丸となって業務継続に取り組んでいただいていることに、経営陣を代表し、改めて深く感謝申し上げます。(中略)

我々銀行は、どんな状況でも、重要な社会インフラとして、資金の決済・供給機能を果たしていかなければなりません。皆さんが業務の継続を求められている意義はここにあります。資金繰りにお困りのお客さまへの支援に止まらず、様々な金融サービスについて社会から頼りにされているのです。私が申し上げたいのは、皆さんに安心して業務に取り組んでもらえるよう、安全・健康・処遇に最大限配慮する、ということです。

(写真)感染症対策本部より全従業員に向けてメッセージを述べる髙島三井住友銀行頭取
新型コロナウイルス対応に関する従業員向けビデオ・メッセージ(2020年4月)

また、2020年5月に緊急事態宣言が全面解除されると、髙島は従業員向けのビデオ・メッセージを再度発出し、緊急事態宣言下で業務継続を担った従業員に改めて感謝するとともに、「社会が数々の困難に直面している今こそ、お客さまを金融面から支えていく必要がある」「経済活動が再開されたなかで、感染予防とお客さまへの対応を両立させるという、これまで以上に困難な対応が求められている」と述べた(注12)

この間、海外拠点においては、三井住友銀行の中国現地法人三井住友銀行(中国)有限公司が春節休暇(1月24日~30日)中の2020年1月28日に現地法人社長を本部長とする緊急対策本部を立ち上げ、春節後は出勤率を大幅に引き下げつつ、必要最低限のオペレーションを維持した(注13)。その他の地域でも、各国の感染状況・政府対応に応じて、従業員を 2 チーム以上に分けるスプリット・オペレーションや在宅勤務で業務を継続した。感染が急拡大した欧米では、原則、在宅勤務で業務を継続することとなった。