(コラム)

業務改革を通じたコストコントロールと生産性向上

当社は、「資本」「資産」「経費」の効率にこだわった運営を行うなかで、2019 年度末までの 3ヵ年で 500億円、中期的には1,000億円のコスト削減を目標に掲げた。その実現に向けて、2017年4月、当社は「生産性向上」「業務効率化」「コストコントロール」を推進する部署として「業務改革室」を企画部の部内室として設置(注10)し、①RPA(Robotic Process Automation)などの新しいテクノロジーの活用、②グループベースでの業務集約・シェアード化の推進等に取り組んだ。

RPAなどの新しいテクノロジーの活用

RPAは、「従来は人間のみが行うことができると考えられていた作業を代行するもので、高度化するソフトウェア、およびそれらを利用した業務改革手法」等と定義されている。具体的には、パソコン上で人間が行っている様々な操作をソフトウェアが記憶し、人間に代わって自動で実行することにより、定型的な業務プロセスを自動化することができる。これにより作業時間を大幅に削減できるほか、データ入力時に生じやすいエラーも解消することができる。さらに、RPAの導入により生じた余剰人員を、より付加価値の高い業務に投入できるというメリットもある。

三井住友銀行は、2016年度よりRPAの実証実験を実施し、2017年4月から本部業務の一部にRPAを本格導入した。具体的な導入プロセスとしては、まず、全ての本部部署を対象に業務の可視化を実施し、無駄な業務の廃止、重複する業務の集約を進めるとともに、それでも残存する業務のうち、RPAで代替可能な業務については、業務プロセスをRPA に適合するように見直したうえで、RPA による自動化を実施した(注11)

その際、複数のコンサルティング会社にパートナーとして参画してもらい、社内外の専門知識を結集して短期間で高品質の成果を出すCoE(Center of Excellence)方式を採用して、各社、各業務部門におけるRPAの導入支援にあたった。これにより、当社として最先端のノウハウをスピーディに吸収・確立し、開発手法の標準化、ガバナンスコントロール、セキュリティ対策等の面で、高い品質の開発・運営管理体制の構築を実現することができた。

図表2-7 営業店における顧客往訪前情報収集や金融商品取引モニタリングに関する集計業務におけるRPAの活用
(図表2-7)RPAによる顧客往訪前情報収集の効率化
図表2-7 営業店における顧客往訪前情報収集や金融商品取引モニタリングに関する集計業務におけるRPAの活用
(図表2-7)RPAによる金融商品モニタリングに関する集計業務の効率化

2017年秋以降は、RPAに関する従業員向けの研修制度をスタートさせ、従業員自らがRPAツールを使ってソフトロボを開発し、各部署で主体的に業務の効率化や働き方改革に取り組める態勢を構築した。こうしたRPAの導入により、2017年度から2019年度までの3ヵ年で350万時間、1,750人相当の業務量をRPAによって削減できた。2020年度にスタートした新中期経営計画においても、グループ全体でのRPAの活用を通じて3ヵ年でさらに300万時間(1,500人相当の業務量)の業務量削減を見込んでいる(このうち三井住友銀行で150万時間)。

三井住友銀行は2019年2月、これまでに培ったノウハウをもとに、「SMBCバリュークリエーション株式会社」を設立し、UiPathとの戦略的業務提携の下、SMBCグループ外の企業に対する、先端技術を活用した生産性向上施策の設計・導入・運用およびコンサルティングの提供も開始している。

グループベースでの業務集約・シェアード化の加速

業務改革の第2の柱は、グループベースの業務集約・シェアード化の加速である。2021年4月以降、三井住友カードとSMBCファイナンスサービス、SMBCコンシューマーファイナンスの東京本社を東京都江東区豊洲の「SMBC豊洲ビル」に順次集約して、グループ一体運営を深化させるとともに、オフィス経費の削減を進めた。また、これまでにグループ各社の購買・支払業務、倉庫・物流センター機能、給与/支払等の人事関連事務、電算センター等の集約を進めた。

2020年4月には、当社の子会社として「株式会社SMBC Reソリューションズ」を設立し、これまでグループ各社が個別に行っていたファシリティに関する企画、不動産に関するコンサルティング、保守・維持管理、修繕業務等を同社に集約した。さらに、2023年度よりグループ統一会計システムをグループ各社に段階的に導入し、業務の集約・標準化、ペーパーレス化を進めることで、業務効率化とコスト抑制を実現することとしている。