(3)次世代プラットフォームの構築

政府は生産性向上等のためにキャッシュレス決済の普及を後押ししてきたが、2018年4月には「キャッシュレス・ビジョン」(経済産業省)を公表し、2015年に18.4%だったわが国のキャッシュレス決済比率を2025年に40%まで引き上げ、将来的には80%を目指すとした。

こうしたキャッシュレス化推進の動きを受けて、SMBCグループは2018年5月に「SMBCグループのキャッシュレス決済戦略」(当社、三井住友銀行、三井住友カード、セディナの4社連名)と題するニュースリリースを行った。これは、事業者・利用者双方の目線からサービスのレベルアップを図り、わが国キャッシュレス決済の阻害要因の解決(注4)を目指す決意を表明したものである。

同時に当社は、決済代行会社最大手のGMOペイメントゲートウェイと連名で、次世代決済プラットフォーム事業に関する提携事業について発表した(注5)。この段階では事業の内容は固まっていなかったが、その後の協議・検討段階でビザ・ワールドワイド・ジャパンが加わり、事業者向けの次世代プラットフォーム「stera(ステラ)」へとつながっていった。

図表5-2 次世代決済プラットフォーム・ステラの仕組みのイメージ図
(図表5-2)次世代決済プラットフォーム「stera」のイメージ図

2019年10月、三井住友カードはGMOペイメントゲートウェイ、ビザ・ワールドワイド・ジャパンと連名で、「stera」についてニュースリリースを行った。「stera」は、キャッシュレス決済において事業者が必要とする機能を一気通貫でカバーする次世代プラットフォームである。「stera」の名称は、「新時代の舵を切る(steer era)」という思いを込めて名付けた。

「stera」のコンセプトは、以下の4点である。

・ワンストップ対応

クレジットカード、電子マネー、QRコードなどあらゆる決済手段に対応するオールインワン新端末「stera terminal」を開発。また、実店舗とEC双方に対応

・オムニ・チャネル対応

実店舗での決済とインターネット決済の決済センター機能を一体運営することで、実店舗とECの決済データを統合(売上金の管理一本化が可能)

・グローバルレベルのネットワーク

世界トップレベルのネットワーク処理能力と独自の不正検知レーダーにより、世界水準のセキュリティを実現

・新たなサービス提供

新端末で利用可能なアプリをそろえたアプリマーケットプレイスにより、事業者の業務効率化を支援

「stera」は、お客さま対応力、価格競争力、セキュリティ・安定運用のいずれの面でも優れているが、これは、カード会社大手の三井住友カード、決済代行会社最大手のGMOペイメントゲートウェイ、世界トップレベルの決済ネットワークを有するVisaというトッププレーヤー3社の協働があって初めて実現できたスキームである。2020年6月には、オールインワンの新端末「stera terminal」の設置を開始した。また2021年4月には、「stera terminal」に店舗業務の効率をアップさせるアプリ(注6)を標準搭載したうえで、リーズナブルな決済手数料で提供するサブスクリプションサービス「stera pack」の提供を開始した。

(写真)店舗に設置された端末ステラ・ターミナルによる決済のイメージ写真
「stera terminal」による決済イメージ

事業者をサポートするために始めたもう一つのサービスが、2019年10月開始のデータ分析支援サービス「Custella(カステラ)」である。「Custella」は、三井住友カードが保有するクレジットカード等に関する膨大なデータを、加盟店や個人が特定できないように処理したうえで、顧客属性(新規、リピーター、インバウンド等)や購買実績(平日・休日、時間帯、場所等)など様々な切り口で容易に加工できるようにした、データの「見える化」ツールである。これにより消費行動の分析が可能となり、加盟店等のマーケティング戦略への活用が期待される。「Custella」の名称は、企業のデータ分析支援サービスを提供するという思いから、「Customer Intelligence」との理念をもとに命名した。

2019年10月の「stera」発表会において、三井住友カード社長の大西幸彦は、「日本のキャッシュレスをリードする」ことを宣言した。この言葉は、2018年以来キャッシュレス決済戦略に本格的に取り組んできたSMBCグループにとって、いわばスローガンとなっている。今後とも、事業者・利用者双方の「お客さま起点」でのキャッシュレスの課題解決を通じて、SMBCグループは、文字通り「日本のキャッシュレスをリードする」ことを目指している。