第12章
業務インフラの高度化

1.三井住友銀行における事務運営の高度化

(1)事務運営体制の整備

事務の運営には、常にサービス品質の維持・向上と効率化の両立が求められる。ここ10年間においても、新たな法令等への対応(図表12-1)で事務サービスが高度化・複雑化・多様化する一方、事務リスクとのバランスを考慮しつつも、大胆な簡素化・効率化、あるいはペーパーレス化・リモート化を推進し、事務量削減を実現してきた。その変革に伴い、事務運営を担う組織の体制も変化し、人材の重要性も増している。

図表12-1 2011年度から2020年度に、法令などの制改定への対応として、三井住友銀行が事務・システムの制定・見直しを行った主な事象の一覧表
(図表12-1)主な法令等制改定への事務・システム対応(2011~2020年度)

三井住友銀行における事務運営に関わる体制整備としては、まず支店と支店サービス部の統合がある。支店サービス部はもともと2005年に支店から分離した組織であり、支店と支店サービス部が、相談業務と事務にそれぞれ特化することで、専門化・高度化を図っていくことを目的としていた。その狙いについては一定の効果を挙げたものの、デジタル化の進展等により店頭に来店するお客さまが年々減少するなかで、拠点の運営効率化が求められるようになった。また、資産形成層との取引深耕を図るためにも支店と支店サービス部の連携を強化し、店頭におけるコンサルティング・ビジネスを一層強化することが重要な課題となった。そこで、支店と支店サービス部を統合し、運用商品の提案・販売や住宅ローンなどの相談業務を行う「お客さま相談課」と、入出金取引や新規口座開設、諸届受付などの事務を行う「お客さまサービス課」の二課体制にすることとした(注1)。これにより、一体運営・効率運営の実現、相談業務と事務の多役化推進を図った。

支店と支店サービス部の統合は、2016年4月の214拠点における統合を手始めに開始し、比較的規模が大きい拠点については、後方事務集約等による業務量の減少に合わせて実施。2020年4月に全ての支店と支店サービス部の統合が完了した。2020年度からは業務と事務の一体運営をさらに進めるため、個人専用店舗においてお客さま相談課とお客さまサービス課を統合する一課体制への移行を進めている。

また2020年4月には、事務統括部と事務推進部を統合した。これは、事務の企画と推進を一体化することで、スピードアップと効率化を図ることが目的である。

一方、事務の集中処理を行う事務サービス部については、集約された後方事務を請け負うだけでなく、その役割を「事務の母店」へと進化させた。すなわち、新たに事務オフィサーを配置して、異例事務の判断や支店の事務指導など軽量化した支店における円滑な事務運営をサポートするほか、法人事務のBPR(注2)推進や店頭でのデジタル化推進支援など幅広く対応。支店における事務運営の支援・指導、事務品質の維持、高難度事務のスキル継承などを事務サービス部が担う体制とした。

事務運営体制の整備という点では、事務系子会社の再編も進めた。2011年4月時点で8社だった事務系子会社は、内製化(三井住友銀行との合併)や統合により、2021年3月末には2社となっている(図表12-2)。内製化・統合の目的は様々であるが、内製化は銀行業務との連携強化やシナジー発揮によるお客さま対応力の向上、統合は本社機能の集約による人的・物的資源の効率化や事務に関わる指揮命令系統の一本化などを目的に実施した。

図表12-2 2011年度から2020年度に実施した、三井住友銀行の主な事務系子会社の変遷図。2011年4月時点で8社だった事務系子会社は、2021年3月までに、SMBCオペレーションサービスとSMBCグリーンサービスの2社となった。
(図表12-2)三井住友銀行の主な事務系子会社の変遷(2011~2020年度)